上郷温水路群

上郷温水路群について

上郷温水路群は、秋田県にかほ市象潟町上郷に位置する、農業用水路群です。鳥海山麓の標高約200メートルの台地上、約533ヘクタールに広がる地域に、昭和初期に電源開発に伴う発電所設置を契機として建設されました。

特徴

この水路群の最大の特徴は、その幅広さと浅さにあります。水路の幅は最も狭い部分で5.4メートル、最も広い部分で20.0メートルにも及びます。このような構造になった背景には、この地域特有の事情がありました。農業用水として利用していた鳥海山の雪解け水や湧水は、水量は豊富である一方、水温が非常に低いという問題を抱えていました。特に、急傾斜の地形を流れることで水温がさらに低下し、農作物、特に米の生育に悪影響を及ぼす冷水障害を引き起こしやすかったのです。

そこで、この問題を解決するために、幅広く浅い階段状の水路を建設しました。これにより、河川の水温をゆっくりと上昇させ、農作物への冷水障害を緩和し、収量の安定化を目指しました。具体的には、鳥海山北西麓を灌漑する長岡・大森・水岡・小滝・象潟の5本の温水路から構成され、総延長は5.8キロメートルに及びます。

土木遺産・疏水百選

上郷温水路群は、その独特な構造と歴史的価値が評価され、平成15年（2003年）に「土木学会選奨土木遺産」に認定されました。これは、融雪水による冷水温障害の克服を目的として考案された、日本初の温水路群としての功績が認められたものです。さらに、平成18年（2006年）には、農林水産省と「疏水百選」実施事務局によって「疏水百選」にも選定され、農業用水路としての重要な役割と歴史的価値が広く認められました。

まとめ

上郷温水路群は、地域の農業を支える重要なインフラであるだけでなく、土木技術と自然環境への配慮が見事に融合した貴重な遺産です。その歴史と機能は、地域の農業の発展に大きく貢献してきました。

関連情報

疏水
疏水百選
* 鳥海山

外部リンク

秋田県の疏水紹介「上郷温水路群」（秋田県土地改良事業団体連合会）

もう一度検索