下村寿一

下村 寿一（しもむら じゅいち）は、1884年（明治17年）7月31日に京都府与謝郡加悦町（現在の与謝野町）に生を受け、1965年（昭和40年）1月9日にその生涯を終えた日本の文部官僚、教育者です。

経歴

東京帝国大学法科大学で法律を学び、1910年（明治43年）に卒業しました。官界に入り、まず山形県庁にて県の事務官や警視としての職務にあたりました。その後、富山県や東京府で理事官を歴任し、地方行政における経験を積みました。

やがて文部省へと籍を移し、参事官や文部大臣秘書官として省の中枢に関わりました。宗教局長、社会局長といった重要なポストを経験しましたが、1929年（昭和4年）に一度、官職から身を引きました。

しかし、数年の後、1932年（昭和7年）に再び公職に就き、以前務めた宗教局長として文部省に復帰しました。1934年（昭和9年）には普通学務局長に異動となり、教育行政の中核を担うこととなります。

教育分野での貢献

教育機関の運営においても重要な役割を果たしました。1935年（昭和10年）からは、女子高等教育の重要な拠点である東京女子高等師範学校の校長に就任し、長きにわたり女子教育の振興に尽力しました。第二次世界大戦末期の1945年には、女子学習院長に転じ、戦中・戦後の混乱期における学園運営にあたりました。

戦後の活動と晩年

戦後も教育・社会教育分野への関わりは続きました。1948年から1955年にかけて、大日本女子社会教育会（現在の公益財団法人日本女性学習財団）の理事長を務め、女性の社会教育推進に貢献しました。また、宗教法人審議会では会長を、文化財専門審議会では副会長を務めるなど、文化・宗教分野の諮問機関でも重責を担いました。

晩年には、1953年12月、国有財産管理処分の問題、特に「富士山頂払下げ事件」に関連し、衆議院行政監察特別委員会に証人として喚問される出来事もありました。

著作

教育行政、社会教化、女子教育などに関する複数の著作を残しています。代表的な著書には、教育行政の要点をまとめた『教育行政撮要』、社会教化運動に焦点を当てた『現代教育学大系 原論篇第廿三巻 社会教化運動』、戦時下における女子教育の方向性を示した『聖戦完遂と女子教育』などがあります。また、論文として『文部時報』に「明治以来の宗教行政」を発表するなど、歴史的視点からの論考も行っています。

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