下條正男

下條 正男

下條 正男（しもじょう まさお）氏は、1950年（昭和25年）に生まれた日本の歴史学者です。長年にわたり、特に朝鮮半島の歴史と文化を専門とし、その知見を基に様々な活動を行っています。現在は、拓殖大学国際学部で教授を務め、教鞭をとる傍ら、島根県庁が設置した「竹島問題研究会」の座長として、竹島に関する調査研究と啓発活動を主導しています。特に、日本の固有の領土であると主張する竹島（韓国名：独島）の歴史的経緯や国際法上の位置づけに関する研究で、その名が広く知られています。

経歴

長野県で育った下條氏は、國學院大學大学院で歴史学を深く学び、博士課程を満期退学しました。その後、韓国に渡り、三星総合研修院で主任講師を務めたほか、仁川大学校では客員教授として教壇に立ち、日韓双方の文化や教育現場での経験を積みました。帰国後、1999年（平成11年）に拓殖大学に着任し、国際開発研究所教授として研究活動を開始。翌2000年（平成12年）には国際学部の教授となり、現在に至るまで、後進の育成にあたるとともに、精力的に研究を進めています。

竹島問題に関する活動と知見

下條氏の研究活動の中核をなすのが、日本と韓国の間で争点となっている竹島の領有権問題です。この問題について、歴史資料の分析や現地調査を通じて、日本の立場を学術的に裏付ける研究成果を発表しています。氏は、単に研究室に留まらず、社会に向けた発信も積極的に行っています。

2010年（平成22年）3月には、一部の教育団体が「竹島は韓国領である」とする見解を示したことに対し、他の団体と共に公開質問状を送付し、教育現場における歴史認識のあり方に一石を投じました。また、竹島の隣に位置する鬱陵島は、竹島問題の歴史的な背景を知る上で重要であると考え、現地視察を計画しました。しかし、2011年7月31日、その目的で韓国へ入国しようとした際に、仁川空港での入国審査で当局によって入国を拒否されるという出来事がありました。この一件は、竹島問題に対する氏の積極的な姿勢を示すものとして注目を集めました。

島根県庁の竹島問題研究会座長としては、地元の視点からの研究を深め、県民への啓発活動や政府への提言などを行っています。さらに、2016年には内閣府認証の特定非営利活動法人日本領土領海戦略会議の名誉顧問に就任するなど、国境・領土問題全般に関する活動にも関わっています。

主な著作

下條氏は、竹島問題に関する多くの著作を世に送り出しています。代表的な単著としては、竹島問題に焦点を当てた研究の集大成ともいえる『竹島は日韓どちらのものか』（文春新書、2004年）や、問題の核心に迫る『竹島vs独島　日本人が知らない「竹島問題」の核心』（ワニブックス新書、2021年）などがあります。これらの書籍を通じて、氏は竹島の領有権を巡る日韓両国の主張の根拠を詳細に検証し、日本の立場を分かりやすく解説しています。その他にも、『日韓・歴史克服への道』（展転社、1999年）、地元島根からの視点を取り入れた『発信竹島　真の日韓親善に向けて』（山陰中央新報社、2006年）など、多岐にわたる著作があります。

また、自身の専門分野にとどまらず、領土問題全般や国際情勢に関する共著や編著にも携わっており、『知っていますか、日本の島』（自由国民社、2002年）や、『図解島国ニッポンの領土問題』（東洋経済新報社、2005年）といった書籍を通じて、一般読者にも日本の領土問題への関心を促す活動を行っています。

長年にわたる学術研究と啓発活動を通じて、下條正男氏は竹島問題に関する日本の論客の一人として、その知見と主張を発信し続けています。彼の活動は、この複雑な領土問題の歴史的背景や現代的な課題を理解する上で重要な示唆を与えています。

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