不安な演奏

不安な演奏

松本清張による長編推理小説『不安な演奏』は、1961年から1962年にかけて『週刊文春』に連載され、文藝春秋新社から単行本として発刊されました。本作は、緻密なストーリー展開と人間ドラマが織り込まれた作品で、多くの読者を惹きつけています。

あらすじ

物語は、雑誌編集者の宮脇平助が主人公です。彼は、自身の興味を満たすために、連れ込み旅館の部屋にテープレコーダーを仕掛け、本物の録音を収集する活動を行っていました。しかし、彼が手に入れたテープには、男同士による殺人計画が含まれていたのです。この衝撃の内容に触れた映画監督の久間隆一郎は、宮脇とともに真相を探ることになります。

録音に含まれていた地名の一つが、新潟県柏崎市の鯨波であり、そこを訪れた久間は、溺死体の発見に関するニュースを目にします。溺死体は胸ポケットに京王帝都電鉄の回数券を所持しており、この手がかりを元に宮脇と久間は捜査を進めます。彼らは、回数券が区会議員の南田広市によって購入されたものであることを突き止めますが、南田の娘、菊子は何らかの理由で宮脇に嘘をつくのです。

久間はさらに、南田広市が国務大臣の秋芳武治と繋がりがあり、選挙違反に関わっている可能性を考え始めます。彼は、秋芳の出納責任者である千倉練太郎が行方をくらましたことから、選挙違反が事件に絡んでいるのではないかと疑念を抱きます。一方、宮脇は布田駅前の不動産屋を起点に、録音の持ち主を突き止めようとします。

物語は、宮脇と久間の捜査が進展する中、次々と起こる事件や人間関係の闇に焦点を当てていきます。久間は仕事が多忙なため、鯨波の洞穴で出会った青年、葉山良太が彼の調査を手伝うことになります。葉山は住職の田辺悦雲に注目し、録音内容との関連を探りますが、捜査は複雑な展開を見せます。

南田広市が失踪し、彼の死体が尾鷲駅から発見されるなど、物語は一気に緊迫感を増していきます。宮脇は葉山と共に尾鷲を訪れ、事件の背後に隠された真実を探ろうとしますが、彼らは犯人によって仕掛けられた巧妙な罠に翻弄されてしまいます。さらに、菊子の失踪や田辺の怪しい行動から、宮脇は次第にこの事件の背後に潜む陰謀を掴もうと奮闘します。

主な登場人物

• - 宮脇平助: 雑誌編集者で、芸能欄を担当。資産家の家庭に育り、独特の価値観を持つ。
• - 葉山良太: 久間が出会った青年。裕福な家庭に育っている。
• - 久間隆一郎: 映画監督。好奇心旺盛で、著名な作品を多く手掛けている。
• - 南田菊子: 南田広市の長女で、公団に勤務。
• - 南田広市: 区会議員で、秋芳武治のつながりを持つ。
• - 千倉練太郎: 秋芳の出納責任者で、行方不明。
• - 秋芳武治: 現国務大臣で、選挙違反に絡む。
• - 田辺悦雲: 祥雲寺の住職。

まとめ

『不安な演奏』は、推理小説の枠を超えた人間ドラマを描き出す作品です。政治的な陰謀、人間の欲望、そして事件が交錯する中で、物語は濃厚なサスペンスを生み出しています。松本清張の革新的なプロットと魅力的なキャラクターによって、読者は最後まで目が離せなくなります。

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