不知火 (妖怪)

不知火（しらぬい）について

不知火は、九州地域に伝わる怪火の一種で、特異な美しさを持つ現象です。この怪火は、旧暦8月1日、新月の風の弱い夜に八代海や有明海で確認されることが多く、「千灯籠」や「竜灯」とも呼ばれています。大正時代に入ってから、科学的な見地からその理由が解明され始めました。

概要

不知火は沖合数キロメートルの位置に出現し、「親火」と呼ばれる一つか二つの火からスタートし、徐々に左右に広がって数を増やし、最終的には数百から数千にも達することがあります。その壮大な光景は、4〜8キロメートルの距離にわたって広がり、最も見やすい時間帯は午前3時前後の引潮時です。この現象は海面から約10メートルの高さから観察されるため、近くに寄ってもその正体を見ることはできません。実際、不知火に近づくと、火はどんどん遠ざかっていく不可思議な性質もあります。

不知火に関連する伝説も存在し、かつてこの光は龍神の灯火と考えられており、漁村ではこの火が見える日に漁に出ることが禁止されていたことがありました。日本書紀や風土記にも、その怪火にまつわる伝説が記されています。特に景行天皇が不知火の光に導かれて船を進めたという話は有名です。これが「不知火」の名称の由来となると考えられています。

正体と科学的な解明

不知火の研究が本格化したのは大正時代からで、江戸時代までは妖怪として扱われていました。様々な説が提唱され、現在では海面での温度差や潮の干満により発生する蜃気楼の一種とされています。具体的には、干潮時に見える広大な干潟に、漁船の灯りが屈折して見える現象が関与しているとされています。

研究者の宮西道可や山下太利は、不知火の光源は漁火であり、温度差によって光が変化することで、目の錯覚が生じると説明しています。この異常な屈折現象は、他の場所や他の日でも起こり得るとも言われています。

現在の状況

近年では観測が難しくなっています。干潟が埋め立てられたり、海水の汚染が進んだりすることで、かつての不知火の光景が姿を消しつつあります。しかし、熊本県立宇土高等学校の科学部地学班が2016年以来、不知火の研究を継続しているのは朗報です。学生たちは八朔の時期に不知火の観測を行っており、2023年には鮮明な側方蜃気楼の再現にも成功しました。

公的な記録としては1988年の最後の撮影から36年を経て、漁船に搭載したLEDライトの光が波及していく様子の撮影にも成功しました。

文献

不知火についての文献は多数存在し、特に『不知火』という文献集には、さまざまな研究と観測結果がまとめられています。著者の中には山下太利や宮西道可が含まれており、彼らの研究は、不知火を理解する上で重要な資料となっています。

関連項目

• - 狐火
• - 不知火
• - 永尾神社

このように、不知火は日本の自然現象の中でも特に神秘的であり、歴史と科学が交差する魅力的な対象です。

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