世に万葉の花が咲くなり

アルバム『世に万葉の花が咲くなり』

『世に万葉の花が咲くなり』は、サザンオールスターズが1992年に発表した11作目のオリジナルアルバムです。本作品は9月26日にCDとカセットテープとしてリリースされ、その後再発も重ねられています。最初の発売からさらに改良され、ダウンロードおよびストリーミングサービスでも楽しめるようになりました。

背景と制作経緯

このアルバムは、前作『稲村ジェーン』から約2年の歳月を経て制作されました。全曲が収録されたCDは73分という長さで、16曲を収めるという形で整理されています。これは、サザンオールスターズのオリジナルアルバムの中でも特に多い曲数となります。音楽アレンジャーの小林武史が本作において重要な役割を果たし、ほぼ全トラックの編曲を手がけました。制作当初、スタジオには最新のコンピュータが導入され、新たな作業手法が可能となり、桑田佳祐は自らの「猫に小判スタジオ」で音楽制作を進めていました。

特に、本アルバムのタイトルや歌詞には、古代の日本文化や日本語に対する敬意が感じられます。桑田は『万葉集』など日本の文学を通じて、文化の大切さを再確認しながら創作を行いました。同時に、関口和之は不在であり、ベースは他のミュージシャンによる演奏やシンセサイザーによって補完されました。

リリースとビジュアル

このアルバムの歌詞カードは、桑田が自ら切り抜いた新聞や雑誌の記事を用いてデザインされています。また、発売前に行われた北京でのライブを記念して、漢文の引用も含まれており、中国の文化への敬意が示されています。特に、ファンクラブの会員に送られた招待状にはアルバム名が使われた独特のメッセージも添えられていました。

1998年の再発売では、LPジャケットを模した紙ジャケットが採用され、小林武史によるライナーノーツが付属しました。このように、アートワークへの思考も重ねられ、視覚的にもアルバムの魅力を引き立てる要素となっています。

批評と受賞歴

本作は商業的にも成功を収め、オリコン週間ランキングで4週連続1位を獲得しました。最終的な販売枚数は179.4万枚に達し、ダブルミリオンとして日本レコード協会に認定されています。小林武史は、その評価の中で「非常にクオリティの高いアルバム」とし、特に新鮮味を保っている楽曲として「HAIR」「ブリブリボーダーライン」「亀が泳ぐ街」を挙げています。

収録曲の紹介

アルバムには多様な曲が含まれており、各曲が持つテーマやスタイルでも大きな印象を与えています。たとえば、「せつない胸に風が吹いてた」はアップテンポな楽曲で、桑田の思い出が織り交ぜられた内容となっています。また、「HAIR」はアコースティックな伴奏からストリングスが加わる構成で、聴く人の心に残ります。さらに、「ニッポンのヒール」ではボブ・ディランを意識したスタイルが表現され、リスナーに強いメッセージを伝えています。

このように、多彩にわたる16曲は、桑田佳祐の音楽の幅広さと深さを示しており、今もなお多くのファンに愛されています。

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