世代間倫理

世代間倫理とは

世代間倫理（intergenerational ethics）とは、過去、現在、未来という異なる時間軸に存在する世代間で、倫理的な義務や権利について考察する概念です。特に、環境問題が深刻化する現代において、未来世代への責任という観点から注目されています。

世代間倫理の根源

人間は、経済的価値、健康、幸福など、さまざまな価値を追求します。人類全体の幸福を追求する中で、環境問題は大きな障害となりえます。そこで、自然や資源に価値を認め、それを守るという考え方が生まれました。この考え方を長期的な視点で捉え、未来世代の生存可能性を考慮するのが世代間倫理です。

環境問題における「自然の生存権」や「地球有限主義」といった考え方も、世代間倫理と深く関連しています。これらの考え方は、現在世代が、未来世代の生存を脅かす可能性のある環境破壊を抑制する根拠となります。

世代間倫理は、持続可能な社会を構築するための重要な概念です。現在世代の行動が未来世代に影響を与えるという認識に基づき、将来にわたって人類が幸福に暮らせるよう、責任ある行動を促します。

世代間倫理における議論点

世代間倫理は、重要な概念である一方、いくつかの議論点や矛盾も指摘されています。

1. 世代間の非対称性

過去世代、現在世代、未来世代は同時に存在できないため、義務や権利を一方的に主張することが難しいという問題があります。過去世代が環境に負荷をかけた責任を、現在世代や未来世代が負うのは不公平ではないかという指摘もあります。

2. 未来世代の権利

未来世代はまだ存在しないため、具体的な権利やニーズを特定することが困難です。どこまで責任を負うべきか、どのような未来を保障すべきかという議論は、現在も続いています。

3. 論理的矛盾

世代間倫理は、世代間の公平性を目指す一方、現実には世代間で利益が対立することがあります。例えば、現在世代の経済発展が、未来世代の環境を悪化させる可能性もあります。このように、世代間倫理は、論理的な矛盾を抱えている側面があります。

世代間倫理の重要性

上記のような議論点はあるものの、世代間倫理は、現代社会において非常に重要な概念です。なぜなら、環境問題をはじめとする地球規模の問題は、世代を超えて影響を及ぼすからです。

世代間倫理の視点を持つことで、現在世代は、自分たちの行動が未来世代にどのような影響を与えるかを考慮し、より責任ある選択をすることができます。これは、持続可能な社会を構築するために不可欠な考え方です。

まとめ

世代間倫理は、世代を超えて倫理的な義務や権利について考察する概念であり、環境問題や持続可能性の観点からますます重要になっています。議論点や矛盾もありますが、未来世代への責任を果たすため、世代間倫理の視点を持って行動することが求められています。

参考文献

鈴村興太郎・宇佐美誠・金泰昌編『公共哲学20　世代間関係から考える公共性』東京大学出版会、2006年
鈴村興太郎編『世代間衡平性の論理と倫理』東洋経済新報社、2006年
イーディス・ブラウン・ワイス『将来世代に公正な地球環境を―国際法、共同遺産、世代間衡平』日本評論社、1992年
Axel Gosseries & Lukas H. Meyer (eds.), Intergenerational Justice, Oxford University Press, 2009
John Roemer & Kotaro Suzumura (eds.), Intergenerational Equity And Sustainability, Palgrave Macmillan, 2007.
Joerg Chet Tremmel (ed.), Handbook of Intergenerational Justice, Edward Elgar, 2006.

関連項目

エートス
環境教育
美意識
世代
世代間競争
世代間格差
* 非同一性問題

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