世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら

概要

川村元気による小説『世界から猫が消えたなら』は、郵便配達員である男性が主役となり、彼の愛猫との生活を通して人間関係や生と死について深く考察する物語です。著者が幼少期に体験した猫の突然の失踪や、大人になってからの携帯電話の喪失をテーマにして、約1年の構想と半年の執筆を経て完成しました。物語はファンタジーの要素を含みつつ、家族の形を描くドキュメンタリー的な側面も持ち合わせており、登場人物にはあえて名前を付けず、読者が自己投影しやすいように設計されています。初めてLINE公式アカウントで発表された連載は、2012年10月にマガジンハウスから書籍として刊行されました。その後、この作品は本屋大賞にもノミネートされ、ラジオドラマや実写映画化も果たしています。

あらすじ

物語はある月曜日から始まります。主人公である「僕」は体調不良から医者の診断を受け、余命1週間の脳腫瘍であることを告げられます。自宅に戻ると、自分に似た「悪魔」が現れ、世界から何かを消すことで、1日寿命を延ばす提案をします。「僕」はまず最初に電話を消すことにし、3年前に別れた恋人に連絡を取ります。

次の日、彼女との再会を果たし、かつての思い出や家族について語り合いますが、電話を消してしまったことで時に辛い思い出を振り返ることになります。水曜日には、自分の親友が経営するレンタルビデオショップで映画を選ぼうとしますが、重いテーマを持つ『ライムライト』が見られず、結局、白いスクリーンを前に自分の過去と向き合うことになります。

木曜日には、自身の猫「キャベツ」が人間の言葉を話し始め、時の流れに縛られない日常への気づきを与えます。猫との散歩を通じて、「僕」は母を失った過去に思いを馳せます。金曜日には、最愛の猫をこの世界から消す提案がなされ、母のことや過去の思い出が胸を締め付けます。猫の消失は、自身の記憶さえも消し去る選択です。

最終的に「僕」は、猫を消さない決意を固め、父への手紙を執筆することにします。手紙を書き終えた後、「僕」は猫を預けるために父の元へ向かいます。物語の終章は、家族や愛、命の大切さを描き出しつつ、読者に深い感動をもたらします。

登場人物

• - 僕: 30歳の郵便配達員で、余命1週間を宣告された男性。
• - 悪魔: 彼に命を延ばす提案をする、自身に似た存在。軽薄で多様な趣味を持つ。
• - 彼女: 僕の元恋人で、映画好き。物語を通じて彼とのかつての思い出が語られる。
• - キャベツ: 主人公の飼い猫。突然人間の言葉を話し始め、主人と心の交流を持つ存在。
• - 親友（ツタヤ）: 映画に詳しい友人で、物語に重要な役割を果たす。

衝撃の評価と影響

『世界から猫が消えたなら』は、執筆からかなりの速さで注目を集め、本屋大賞にノミネートされた他、2016年には映画化されるなど多くのメディアに展開しました。この作品は、家族の絆や記憶についての考察を含んでおり、多くの読者に感動を呼び起こす内容となっています。

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