世界の終わりに柴犬と

『世界の終わりに柴犬と』

石原雄による漫画作品『世界の終わりに柴犬と』は、終末世界を旅する女子高生（ご主人）と、彼女に忠実な柴犬ハルさんの日常を描いた作品です。元々は作者がツイッターで発表していた漫画で、その人気からKADOKAWAのWebマンガサイト「ComicWalker」での連載、そしてアニメ化へと展開しました。

作品の背景

作者の石原雄は、2017年からツイッターで漫画を発表し始めました。この作品は、石原が「自由に好きなものを描く」ために始めたもので、人間世界が滅亡していたり、犬や動物が喋ったり、人外の存在が登場したりする理由は、作中では明確にされていません。石原は、そうした制約から解き放たれた自由な世界で物語を描くことを意図しています。特に、犬と飼い主の関係性を重視しており、ハルさんは「犬としてのパートナー」、ご主人は「ハルさんのご主人」として、シンプルながらも強い絆で結ばれています。

ハルさんのモデルは、石原が飼っている同名の柴犬です。石原は、静かな場所で執筆活動をするために郊外に引っ越しました。実家では別の犬を飼っていましたが、自分の犬が欲しかった石原は、引っ越しを機に柴犬を飼うことに。ペットショップで出会ったハルさんに運命を感じ、すぐに自宅に迎え入れたといいます。この出会いは、漫画本編や描き下ろしにも投影されています。

石原は「ただほっこりするだけでなく、日常ものでもない犬漫画」を目指しており、ハルさんの日常や「柴犬あるある」を物語に組み込み、独特な世界観を構築しています。ハルさんの笑顔が、石原にとって創作活動のバロメーターであり、日々のルーティンを大切にしながら、創作活動を続けていきたいと語っています。

物語のあらすじ

物語の舞台は、文明が崩壊した後の無人の世界です。女子高生のご主人と柴犬のハルさんが、この世界を気ままに旅します。ハルさんは哲学的な発言をしたり、ご主人にツッコミを入れたりしますが、基本的にご主人に忠実です。旅の途中では、他の犬や動物、時には人外や異星人が登場し、1人と1匹の日常を彩ります。ご主人は動物や異星人と意思疎通ができるため、終末世界でありながら悲壮感は薄く、ほのぼのとした雰囲気が作品全体を包んでいます。

主な登場人物

ご主人: 本名は不明の女子高生。黒髪のボブヘアで、左目の下に泣きぼくろがある。セーラー服姿でリュックを背負い、ハルさんと共に各地を旅する。方向音痴でマイペースな性格。動物と会話ができる。
ハルさん: ご主人の愛犬である柴犬のオス。知識が豊富で、哲学的な発言をすることもある。食いしん坊で、洗われるのが苦手。たぬき顔であることを気にしている。
黒柴: ご主人とハルさんが出会ったオスの黒柴。野生化していたが、2人と出会い共に旅をする。八百比丘尼から「チョコ丸」と名付けられる。
白雪: メスの白柴。ハルさんに恋をし、彼らを追いかける。ツンデレな性格。
かぐや: 黒柴のメスで、ご主人の幼馴染。ハルさんを「ハルお兄ちゃん」と呼び慕うが、他の犬には塩対応。白雪とは恋のライバル。
シベリアン・ハスキー: いつも元気なオスの犬。ドジっ子でお笑い芸人ノリ。
たぬ3兄弟: 3匹のたぬき。ご主人に懐き、ハルさんをライバル視している。
泉の女神: 童話『金の斧銀の斧』に登場する女神。ご主人やハルさんと不思議なやりとりをする。
八百比丘尼: 不老不死の少女。黒柴のチョコ丸と行動を共にしている。
宇宙人: 高度な文明を持つ異星人。友好的な性格で、1人と1匹の旅先で時々出会う。

単行本とアニメ

単行本は4巻まで発売されており、描き下ろし短編も収録されています。1巻には「10年後の君と」、2巻には「ガラスケースの中の君と」、3巻には「夏の終わりに待つ君と」が収録されています。

また、2022年からはYouTubeチャンネルでアニメ（漫画動画）の配信も開始されました。二次創作ガイドラインも発表され、ファンによる動画の切り抜きや実況も認められています。

コラボと商品展開

他作品とのコラボアニメや、Tシャツ、トートバッグなどのグッズ展開も行われています。ペットフードブランド「無一物」とのコラボでは、ハルさんの描き下ろしイラストがパッケージに使用されました。

『世界の終わりに柴犬と』は、終末世界を舞台にしながらも、ほのぼのとした日常を描いたユニークな作品です。可愛らしいキャラクターと、哲学的な会話やユーモラスな展開が魅力で、幅広い層から支持を集めています。

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