世界アンチ・ドーピング機構とは？意味をやさしく解説

世界アンチ・ドーピング機構（WADA）とは

世界アンチ・ドーピング機構（World Anti-Doping Agency, WADA）は、スポーツにおけるドーピング（薬物使用）を防止し、クリーンなスポーツ環境を推進するために設立された国際的な独立機関です。日本語では、世界反ドーピング機構、世界反ドーピング機関などとも呼ばれます。

設立の背景

1968年のメキシコオリンピックとグルノーブルオリンピックで初めてドーピング検査が実施されて以来、アンチ・ドーピング活動は国際オリンピック委員会（IOC）と各競技団体が主導してきました。しかし、1998年のツール・ド・フランスで組織的なドーピングが発覚する「フェスティナ事件」が発生し、IOC主導の体制では限界があることが明らかになりました。この事件を契機に、1999年、IOC主催の「スポーツにおけるドーピングに関する世界会議」で採択された「ローザンヌ宣言」に基づき、WADAが設立されました。

WADAの活動内容

WADAは、以下の活動を通じてアンチ・ドーピング活動を推進しています。

国際基準の策定と統一: 禁止薬物リスト、検査、分析に関する国際的な基準を策定し、ドーピング違反に対する罰則規定を統一化しています。
検査の実施と分析: 競技者から採取された検体の分析を、WADAが公認する各国の機関に委託しています。日本では、LSIメディエンスが唯一の公認機関です。
教育・啓発活動: アンチ・ドーピングに関する教育や啓発活動を、スポーツ界だけでなく、各国政府や公的機関と連携して行っています。
抜き打ち検査の実施: 競技会中だけでなく、時間や場所を予告しない抜き打ち検査を実施し、ドーピングの抑止に努めています。

WADAの変遷

設立当初、ドーピング検査はIOCが主導していましたが、WADA設立後はWADAがその役割を担うようになりました。2003年には、WADA規程（WADA Code）が正式なルールとして採用され、各競技団体がこれに準拠するようになりました。当初WADAに反発していた国際サッカー連盟（FIFA）も、2006年にWADAの統一基準を受け入れることに合意しました。

ドーピング問題への取り組み

WADAは、ドーピング問題に対して厳格な姿勢で取り組んでいます。2014年には、ロシアの陸上選手のドーピング疑惑を受けて独立委員会を設置し、国家ぐるみのドーピングが発覚しました。この報告書は、モスクワ反ドーピング研究所の公認取り消し、WADAのロシア反ドーピング機関への不適格認定、さらには、世界陸連によるロシアへの出場資格停止処分など、大きな波紋を呼びました。

WADAの課題と将来展望

近年では、アメリカ麻薬取締政策局からWADAの改革を求める提言も出ており、組織運営の透明性や独立性、資金調達など、WADAは多くの課題を抱えています。今後、WADAがこれらの課題を克服し、より効果的なアンチ・ドーピング活動を展開していくことが期待されます。

その他の情報

WADAの日本語翻訳名は複数存在し、組織の表記は「世界アンチ・ドーピング機構」「世界アンチドーピング機構」「世界ドーピング防止機構」などがあります。
WADAの読み方は「ダブリュー・エイ・ディー・エイ」と「ワダ」がありますが、放送業界では「ワダ」が一般的です。

世界アンチ・ドーピング機構