世界エイズ・結核・マラリア対策基金

グローバルファンドとは

世界エイズ・結核・マラリア対策基金（グローバルファンド）は、HIV/エイズ、結核、マラリアという三大感染症の撲滅を使命とする国際的な組織です。資金調達とパートナーシップの構築を担い、各国の保健行政機関やNGOと連携しながら、感染症対策を推進しています。スイスのジュネーブに事務局を置き、2002年1月から活動を開始しました。

設立の背景

20世紀末、国際社会は感染症への協調的な取り組みの必要性を認識し始めました。世界保健機関（WHO）は、貧困に起因する疾病との闘いを提唱し、当初は6つの疾病を対象とした対策が検討されました。その後、HIV/エイズ、結核、マラリアの3つに絞り込まれ、グローバルファンドが設立されました。

日本政府も感染症対策に積極的に関与し、G8九州・沖縄サミットで感染症の重要性を訴えました。コフィー・アナン国連事務総長（当時）も、新たな資金調達メカニズムの必要性を提唱し、グローバルファンド設立の機運を高めました。

組織の運営

グローバルファンドは、スイスの法律に基づいて設立された独立非営利財団であり、世界保健機関との連携を経て、現在は行政自治組織として運営されています。事務局はジュネーブにあり、約700人の職員が活動しています。

グローバルファンドの特徴は、資金調達とプログラム実施を分担している点です。資金調達はグローバルファンドが担当し、プログラムの実施は各国の政府やNGOなどのパートナーが行います。これにより、事務局の規模を抑えながら、効率的な活動を実現しています。

資金調達と実績

グローバルファンドは、主に公的部門からの拠出によって資金を調達しています。設立から2019年7月までに、60以上の国から512億ドル以上の資金が誓約され、458億ドルが支出されました。アメリカが最大の出資国であり、フランス、イギリス、ドイツ、日本が続いています。

グローバルファンドは、3年に一度の増資を通じて資金を調達しています。これまでに6回の増資が行われ、多くの国々が資金提供に協力してきました。

2018年には、1億3100万張の殺虫剤処理ネットを配布し、530万人に抗結核治療を提供、1890万人のエイズ患者に抗レトロウイルス療法（ARV）を提供しました。2020年9月には、設立以来3800万人を救ったと報告されています。

プログラムの仕組み

グローバルファンドは、各国の実情に合わせて資金を提供しています。資金を受ける国は、国別調整メカニズム（CCM）を通じて、資金の活用方法をまとめた申請書を提出します。申請書は、グローバルファンド内の専門家によって審査され、承認されると資金が提供されます。資金の使途は、成果に基づいて評価されます。

課題と展望

グローバルファンドは、成果主義を重視し、資金の透明性を確保しながら、感染症対策を推進しています。しかし、常設の技術職の不足や、実績の評価方法、資金不足など課題も抱えています。これらの課題を克服し、より効果的な感染症対策を進めることが求められています。

市民社会との連携

グローバルファンドは、NGOなどの市民社会との連携も重視しています。世界各地のNGOがGFAN（グローバルファンド支持者連絡協議会）を組織し、政策提言を行ったり、活動を支援したりしています。日本にはグローバルファンド日本委員会（FGFJ）があり、情報発信や啓発活動を行っています。

新たな助成金サイクル

グローバルファンドは、助成金支給において、薬物使用者やコミュニティの権利擁護など、新たな課題にも取り組んでいます。市民社会や地域社会が活動に参画しやすいよう、ツールボックスの提供や情報発信も行っています。

グローバルファンドは、これからも感染症対策の最前線で活動を続け、世界の人々の健康を守るために貢献していくでしょう。

まとめ

グローバルファンドは、世界で最も致命的な感染症と闘うために設立された国際的な組織です。資金調達、パートナーシップ、成果主義を軸に、多くの人々の命を救い、感染症対策に大きく貢献してきました。これからも、世界の人々の健康と安全を守るために、活動を続けていくことが期待されます。

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