世界原子力協会

世界原子力協会（WNA）

世界原子力協会（World Nuclear Association、略称：WNA）は、原子力発電の発展を促進し、原子力産業を支援することを目的とする国際的な業界団体です。その起源は、1975年に設立されたウラン協会（Uranium Institute）に遡り、2001年に組織を改編する形で現在の名称となりました。本部は英国の首都ロンドンに置かれています。

概要と会員構成

WNAは、原子力燃料サイクルのあらゆる段階に関わる企業・組織を会員としています。これには、ウランの採掘、転換、濃縮、燃料成型加工、原子力発電プラントの建設・運用、燃料輸送、そして使用済み燃料管理に至るまで、広範な分野が含まれます。電力会社はもちろんのこと、製造業者やサービス提供者など多岐にわたる企業が加盟しており、2013年末の時点で会員数は177社に達していました。これらの会員企業が世界の原子力発電量の約85パーセントを担っています。

WNAの主要な活動目的は、会員間の連携を深めること、そして原子力技術に関する一般の人々の理解を促進することにあります。運営資金は主に会員からの会費によって賄われています。年会費は、原子力関連の企業活動規模に応じて定められていますが、学術機関や規制機関などの非営利団体に対しては、専用の優遇措置が適用されます。組織は、原子力導入・検討が進む非OECD加盟国を中心に、会員層を拡大する傾向にあります。また、他の原子力関連団体や第三者機関とも密接な協力関係を築いています。

組織構造

WNAの最高意思決定機関は理事会です。理事は会員企業から選出または任命され、その構成は、電力会社、ウランなどの供給関連企業、その他の一般企業という3つの分野から、それぞれ最低2名ずつ選出されることでバランスが保たれています。事務局を統括する事務局長には、2013年1月にアニエッタ・リーシング氏（元バッテンフォール副社長）が就任しています。

規定と倫理

WNAは、原子力利用、核物質の取り扱い、そして情報公開に関する倫理憲章を定めています。この憲章は、第34代アメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワーが提唱した「平和のための核（Atoms for Peace）」構想の理念に基づき、原子力関連企業が果たすべき役割をまとめたものです。

主な活動

WNAの活動は多岐にわたります。

ワーキンググループ

2013年末時点で12のワーキンググループが活動しており、会員企業が一堂に会して先進事例の共有、情報分析、原子力発電の利用拡大に向けた方策の策定などを行っています。これらのグループの多くは、国際原子力機関（IAEA）や国際放射線防護委員会（ICRP）、OECD/NEAといった規制や基準を定める国際機関から産業界の代表として認められており、産業界を代表する提言を行っています。ただし、市場価格に関する議論など、競争法に抵触する可能性のある議題は避けるように規定されています。

情報発信

WNAは積極的な情報発信を行っています。公式ウェブサイトには、原子力に関する幅広い情報や関連資料が豊富に掲載されており、メディアや政府関係者などが情報源として利用することが多いです。また、国際会議での発表や各種メディアへの寄稿などを通じても情報を発信しています。WNAが運営する「世界原子力ニュース（World Nuclear News、WNN）」は、世界の原子力関連ニュースを毎日無料で配信しており、広く購読されています。

定例会合

毎年9月にロンドンで開催されるシンポジウムは、業界のリーダーやオピニオンリーダー、第三者機関の専門家などが集まることで知られています。また、毎年4月には、米原子力エネルギー協会（NEI）と共同でWorld Nuclear Fuel Cycle（WNFC）会合を開催しており、多くの業界関係者が集う重要な交流の場となっています。

世界原子力大学（WNU）

WNAは、原子力の平和利用を推進する活動の一環として、世界原子力大学（World Nuclear University、WNU）の運営にも携わっています。WNUは、アイゼンハワー大統領による「原子力の平和利用」構想から50周年を記念して2003年に設立された、教育分野での協力組織です。国連の持続可能な開発委員会（CSD）からは、「持続可能な発展のためのパートナーシップ」として正式に認定されています。WNUのプログラムは世界各地で実施されており、主に原子力業界での実務経験を持つ人々を対象に、原子力技術の平和利用に関する知識や理解を深めることを目的としています。

もう一度検索