世界福音伝道団

世界福音伝道団（せかいふくいんでんどうだん）は、日本のプロテテスタント諸派に属するキリスト教の宣教団体です。この団体は、国際的な福音宣教組織であるWEC Internationalの一員として、世界的な視野を持ちながら、日本の特定の地域に根差した活動を行っています。

その起源は、1913年にまで遡ります。クリケット選手としても知られた宣教師、チャールズ・トーマス・スタッドによって、「アフリカ奥地宣教団」（Africa Inland Mission）として設立されました。当初の目的は、アフリカ大陸の辺境地域に福音を伝えることでしたが、活動範囲は次第に拡大し、アフリカだけでなく、アジアや南米など世界各地へと宣教師を派遣するようになりました。この活動の広がりを受け、約40か国に宣教師を送る規模となったことから、団体名は「世界福音伝道団」（World Evangelization Crusade, WEC International）と改称されました。この名称変更は、活動の領域が特定の地域に限定されず、世界中の人々へ福音を届けるという、より広い使命を帯びるようになったことを明確に示しています。

日本における世界福音伝道団の宣教活動は、第二次世界大戦後の復興が進む1950年に始まりました。この年、最初の宣教師としてA.フルトン氏が日本に派遣されたことが、日本での歩みの第一歩となりました。翌年の1951年には、日本における世界福音伝道団の組織が正式に発足し、宣教活動の体制が整備されました。この時期には、世界各地から多くの宣教師が日本へ遣わされました。特に1951年には、K.ラウンドヒル氏を含む12名の宣教師が、世界各地の5つの国から来日し、日本の宣教の働きに加わりました。これらの宣教師たちは、それぞれの専門性や賜物を活かしながら、集会を開いたり、地域の人々との交流を深めたりする中で福音を伝えていきました。

世界福音伝道団は、人々に直接福音を伝える活動と並行して、文書を通じた伝道にも力を入れました。日本組織が発足した1951年には、「クリスチャン文書伝道団」（Christian Literature Crusade, CLC）が、世界福音伝道団の文書事業部門として設立されました。CLCは、聖書やキリスト教関連の書籍、伝道用の小冊子などを出版・配布することを通じて、多くの人々にキリスト教のメッセージに触れる機会を提供することを目指しました。当初は世界福音伝道団の一部門でしたが、活動の規模が拡大し、専門性が深まるにつれて、独立した運営が必要となりました。その結果、1957年にクリスチャン文書伝道団は世界福音伝道団から独立した法人となり、現在も世界的なキリスト教系文書伝道団体として、多くの国で活動を続けています。

現在、世界福音伝道団の日本支部は、主に近畿地方の滋賀県を主要な活動拠点としています。滋賀県内各地で、地域社会に根差した教会形成や伝道活動、地域住民への奉仕活動などを行っています。福音集会の開催、聖書クラス、子ども向けの集まり、青少年の活動支援など、様々な働きを通じて、地域の人々が福音に触れ、信仰を育むことができるよう努めています。また、滋賀県だけでなく、隣接する京都府や奈良県などでも活動を展開しており、これらの地域においても、キリストの愛を伝え、福音のメッセージを広めるための働きを進めています。宣教師と日本人協力者が力を合わせて、日本の人々への福音伝達に貢献し続けています。

世界福音伝道団は、設立者チャールズ・スタッドが持っていた開拓者精神と、世界の未伝道地域へ福音を届けるという当初からの使命を大切に守りながら、現代の日本社会の必要に応じた形で福音宣教を進めています。国際的な組織の一員としての強みを活かしつつ、日本の特定の地域に深く根差した活動を展開し、文書伝道など専門的な働きとも連携しながら、日本の人々へ福音を伝えることに貢献している団体です。

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