世間

世間（せけん）について

世間とは、インドの宗教に由来する用語であり、「出世間」とともにこの世の様相を2つに分けて理解される概念です。迷いの世界を象徴するものであり、流転と消失を免れない現実を意味します。また、日本では「世間」という言葉が一般的に使われ、「この世」や「社会」を指す語としてあらゆる場面で利用されています。このように、世間の意味は時折変わるものの、仏教においては深い人間の反省を伴った概念となっています。

語源

「世間」という言葉の原型は、サンスクリット語の「ローカ（loka）」に遡ります。この「ローカ」は、「砕く」という意味の動詞「luj」から派生したもので、「滅すべき存在」との解釈がされます。また、「ローカ」に「界」を加えた「ローカ・ダートゥ」は、世間の領域を指し示すとされています。

意味内容

「世間」の「世」は、さまざまな変化を示す「遷流（せんる）」や、破壊を示す「壊れること」、真実を覆い隠すことを意味する「覆真（ふしん）」といった解釈がされます。なぜなら、世間は通常、一見平等である存在を差別化しているため、真実が隠され、虚無や破滅の対象とされるからです。こうした解釈は、一般的な意味合いとは異なり、仏教における「世間」概念にはより深化した認識が求められています。

世間と出世間

「世間」の法則に従うことで、世間において生じる現象を「世間法（せけんぼう）」、また略して「世法（せほう）」と呼びます。一方で、仏教の教えに基づく「出世間法」は、世間から抜け出した高い存在の境界を指しています。人々が「世間」に対してどのように向き合うかは、仏法の理解において重要なテーマです。

八つの世間法

世間は、八つの原則に基づいて統治するとされることがあります。これらの法則は、出世間法としての八正道（正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定）と明確に対比されます。これにより、世間で生活する人々が如何にして精神的な進化を遂げるかが問われます。

三世間

「三世間」とは、この世を3つのカテゴリーに分けた概念であり、これには仮名世間（生命の存在）、国土世間（山河や大地）、五蘊世間（人間を構成する要素）が含まれています。これらは単なる物質的世界にとどまらず、精神的な側面を重視するものでもあります。また、古代哲学者たちは、この迷いの世界や悟りの世界について、さまざまな理論を展開し、精神的成長の段階を表すための体系を考え出しました。

文学における「世間」

「世間」という表現は、日本古典文学の中でも重要なテーマであり、多くの文学作品において用例が見られます。特に『万葉集』には「うつせみ」や「よのなか」という表現が使われ、作者が言わんとしている「世間」の概念が反映されています。これにより、世間が単なる物質的存在ではなく、さまざまな人間の経験、感情、反省が結びついていることが示されています。

世間は、その多面的な性格から人々にとって常に考えるべきテーマであり、宗教的、文化的な側面からも広がりを見せ続けています。

もう一度検索