丙寅教獄

丙寅教獄（へいいんきょうごく）について

丙寅教獄とは、1866年に李氏朝鮮で発生した、キリスト教徒に対する大規模な迫害事件を指します。この出来事は、朝鮮王朝時代における最大の宗教弾圧であり、1万人以上の信者が犠牲となりました。事件の直接の背景には、朝鮮国内のキリスト教の影響力の高まりと、外部の脅威がありました。

歴史的背景

1860年代、ロシアの南下政策が進展し、それに対抗するため朝鮮、フランス、イギリスの三国同盟が企画されました。この同盟の提案には、国内のキリスト教徒も関わっており、興宣大院君である高宗は、当初、友好的な姿勢を示していました。しかし、同盟の実現が難航すると、彼はキリスト教徒への非難が高まることに直面しました。 それに対し、彼は自らの立場を守るために、丙寅教獄という形で弾圧を開始しました。

迫害の実態

この迫害の中で、8,000名以上のカトリック信者が殺害され、多くは残虐な手法で処刑されました。特に切頭山では、捕らえられた2000人以上の信者が斬首や崖からの投げ落としといった残酷な方法で命を奪われました。約170年が経過した現在でも、その残酷さは心に深く刻まれています。

この事件を指揮した人物は、捕盗大将の李景夏であり、彼はこの行為によって武勲を称えられることとなります。

外交的影響

丙寅教獄に対して、フランスは猛烈な反発を示し、極東艦隊の軍艦7隻と兵力1300名を派遣して抗議しました。彼らの要求には、殺害に対する賠償、責任者の処罰、そして通商条約の締結が含まれていましたが、大院君はこれを拒否し、さらに鎖国政策を強化する結果となります。彼は、その後の欧米の軍撃退に成功し、全国主要都市に「外夷侵犯、非戦則和、主和売国」の刻まれた斥和碑を建設しました。

殉教者

この事件で亡くなったキリスト教徒の中には、フランスから派遣された宣教師たちが含まれています。著名な殉教者には、シメオン＝フランソワ・ベルヌーやアンリ・ドリーなどがいます。彼らは1866年3月8日に殺害されました。

慰霊の取り組み

現在、ソウル市の麻浦区合井洞にある龍頭峰が、切頭山聖地として整備されています。この場所には追悼施設が設けられ、1966年には丙寅迫害100周年を記念する博物館や巡礼聖堂が完成しました。また、1972年には殉教者記念公園も造成され、忘れられない記憶として残されています。さらには、1984年にはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世、1985年にはマザー・テレサがこの地を訪れました。

その他の弾圧

李氏朝鮮時代には、19世紀を通じて、キリスト教に対するさまざまな弾圧が行われました。具体的には、1801年の辛酉教獄や1839年の己亥教獄、1846年の丙午教獄などがあり、これらの事件でも多くの信者が命を奪われました。

結論

丙寅教獄は、宗教的迫害の一環として歴史に名を刻む事件であり、その痛ましい過去は今でも多くの人々に思い出され、記憶されています。その歴史的教訓は、宗教の自由の重要性を再認識させるものとなっています。

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