両側町

両側町（りょうがわちょう）とは、道路や広場を挟んで、文字通りその両側に家屋や建物が整然と建ち並ぶことで形作られた町の区域のことを指します。

概要

こうした町のあり方は、特に日本やヨーロッパの都市において多く見られます。ヨーロッパでは広場を囲むように建物が配置されるケースも見られますが、日本では、道路、すなわち通りに沿って展開する両側町の姿を指すのが一般的です。通りを挟んで向かい合う景観は、日本の都市において古くから親しまれてきた町並みの一つです。

歴史

日本の両側町の歴史は、平安時代後期から鎌倉時代にまで遡ることができます。日本の都であった平安京では、建設当初、通りに囲まれた四角い区域が街区の基本単位とされ、その周囲には垣や溝が設けられていました。建物は通りの方ではなく、区域の内側を向くような構造が規定されており、街路に対して閉鎖的な空間でした。

しかし、都で商業が活発になるにつれて、状況は変化していきます。通りに面した家屋が店舗として利用されるようになり、それまで街区の内部志向だった町が、通り側、すなわち外部へと開かれた形へと変化していきました。通りに沿って建物が並ぶこの形態は「頬（つら）」と呼ばれ、一つの町域は通りに面した四つの「頬」に分けられた「四面町」へと姿を変えていきます。

そして14世紀の後半には、この四つの「頬」それぞれが町の中で独自のまとまりを持つようになり、「四丁町」や「片側町」と呼ばれる形態が誕生しました。これは、通り片側の一列が独立した町となる形です。

続く15世紀には、道路を挟んで対面する二つの片側町が一体となることで、今日の「両側町」の原型が形成されていきます。この変化の背景には、南北朝時代から応仁の乱にかけて続いた社会的な混乱がありました。都の住民たちは、自分たちの安全を守り、共同で問題を解決する必要に迫られ、自然と道路を挟んだ向かい合う町々が連携し、地域的な共同体としての両側町を形成していったと考えられています。こうした経済的、社会的な状況を契機とした町の結合は、後に地域自治の基盤となる「町組」が生まれる動きにも繋がっていきました。

江戸時代に入ると、両側町は主要な都市の町割りとして広く採用されるようになります。江戸の日本橋や京橋周辺、大坂の船場といった商業地を含む各地の城下町で、機能的な都市構造として両側町の構造が見られるようになりました。

現代における両側町

現代においても、かつての都であった京都には、両側町の整然とした街並みが随所に見られます。そして、この両側町を単位とする住民のコミュニティは、今なお強い結びつきを保っています。特に京都では、両側町の中央を通る道路は「オモテ」と呼ばれ、単なる通路ではなく、町の住民が集まり、日々の生活や交流が行われる共同的な空間としての役割を果たし続けています。

両側町は、単なる物理的な構造だけでなく、歴史的な背景の中で商業の発展や社会的な動乱を経て、地域共同体の単位として形成・維持されてきた、日本の都市における特徴的な町のあり方と言えます。

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