両耳間時間差

両耳間時間差（ITD）について

両耳間時間差（りょうじかんじかんさ、Interaural Time Difference, ITD）は、音が左右の耳へ到達する際の時間の違いを指します。この現象は音源が視聴者の正面から左または右に偏っている場合に特に顕著となります。例えば、左側に音源があるときは、その音は左耳に先に届き、右耳には遅れて到達します。この時間差は脳による音の方向認識に重要な役割を果たしています。

両耳間時間差のモデル

両耳間時間差は音の方向を特定するための指標の一つで、多くの研究が行われてきました。1960年代以降、両耳間時間差と両耳間強度差（音の大きさの差）の両方が音響研究や聴覚心理学の分野で広く利用されてきました。これらのモデルは、音がいかにして耳に到達するかを理解するために非常に役立ちます。

Kuhnのモデル

Kuhnによる研究では、音速をc、発音の周波数をf、そして人の頭部の横断面を円形としたときの半径をaと定義し、次の式が導き出されています。

• - $$ k = \frac{2\pi f}{c} $$

この式において、条件に応じて、両耳間時間差は次のように表されます。たとえば、半径aが0.09m、音速cが340m/s、音源が耳の真横にある場合（θ = π/2）の場合は、

• - $$ ITD = 0.53 \text{ms} $$

また、音源が特定の位置にない場合は、同じ条件で次のように計算され、

• - $$ ITD = 0.79 \text{ms} $$

ともなります。

WoodworthとSchlosbergのモデル

一方、WoodworthとSchlosbergによる別の近似式も提供されています。この場合も、同じ条件（a = 0.09m、c = 340m/s、θ = π/2）を考慮すると、

• - $$ ITD = 0.68 \text{ms} $$

となります。このように、音の周波数や音源の位置によって計算される時間差は、聴覚の理解に大きな影響を与えます。

まとめと関連項目

両耳間時間差は、音を聞く際に脳が方向を特定するために利用される生理的・心理的機構の一部です。この時間差を理解することにより、聴覚的な定位感情をより深く把握することが可能になります。関連するトピックとしては、両耳間強度差（IID）、両耳間レベル差（ILD）、頭部伝達関数（HRTF）、および両耳聴効果が挙げられます。これらの要素は、音響学や音楽の分野で重要な研究テーマとなっています。

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