中京大学本源氏物語

中京大学本源氏物語

中京大学本源氏物語は、中京大学が所蔵している源氏物語の写本であり、その名称は所蔵先に由来します。この写本には、おおきく分けて二つのバリエーションがあります。一つは、五冊本源氏物語と呼ばれるものであり、もう一つは「大島河内本源氏物語」として知られる河内本です。

5冊本源氏物語

この5冊本源氏物語は、現存するのは若菜上下、橋姫、総角、早蕨の4帖です。この写本は別本の本文を採用しており、通常「中京大学本」と呼ぶ際にはこちらを指すことが多いです。特に興味深いのは、写本の本文が天理大学の「麦生本源氏物語」および「阿里莫本源氏物語」と非常に近いことです。これは、室町時代末期から江戸時代以降に書写されたものでありながら、別本の本文を保有する特異なグループに分類されます。

この写本の特徴として、中京大学本の五冊のうち四冊が「麦生本源氏物語」に写し取られたものである点が挙げられます。すなわち、同じ本文を持つ書写者の筆跡が見受けられ、直接的な書写またはそれに関連する本から写し取られたと考えられています。

翻刻の状況

中京大学本の翻刻は、単独では存在していません。しかし、いくつかの学術刊行物にその一部が掲載されています。例えば、『中京大学図書館学紀要』において翻刻が行われており、また『源氏物語別本集成』には、校異も含まれています。翻刻された具体的な帖としては、以下のものが挙げられます：

• - 『若菜』上
• - 『橋姫』
• - 『早蕨』
• - 『総角』

これらの翻刻は、源氏物語の研究において重要な資源となっています。

河内本源氏物語

もう一つの重要な写本は、河内本源氏物語です。かつて三井合名会社理事である大島雅太郎が保有していたこの写本は、「大島本」として知られています。この写本は『校異源氏物語』や『源氏物語大成』において校異の記録があるもので、河内本の本文を54冊が収録されています。また、河内本に関しては「大島河内本源氏物語」や「中京大学河内本源氏物語」といった呼称が使われることもあります。

参考文献とその影響

中京大学本源氏物語に関する研究はさまざまな文献に貢献しており、特に以下の研究が着目されています：

• - 伊藤鉄也による傍記異文の調査
• - 岡嶌偉久子の研究が中京大学図書館蔵源氏物語に言及しております。
• - また、加藤洋介は河内本源氏物語に関する詳細な研究を発表しています。

これらの文献研究によって、中京大学本源氏物語の特異性、写本の背景、さらには文学的価値が井然と整理されています。

結論

中京大学本源氏物語は、源氏物語の研究における重要な資料であり、その特異な写本と豊かな文学的伝統は、学術的にも文化的にも特筆すべきものです。このような貴重な資料を通じて、日本文学の奥深い世界へと触れることができるのです。

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