中外医学社

株式会社中外医学社

株式会社中外医学社（ちゅうがい いがくしゃ）は、日本の医学・医療分野における専門書籍の出版を主たる事業とする出版社です。その始まりは、1952年に青木三千雄氏によって、日本医事新報社の書籍発行部門として設立されたことにあります。これは、日本医事新報社の創業者である梅沢彦太郎氏が書籍刊行事業への展望を持っていたことを背景としています。以来、中外医学社は医学研究者、臨床医、そして広く医療に関わる人々に向けて、質の高い学術専門書や雑誌を提供し続けています。

会社の歩み

中外医学社の設立は1952年で、当初は東京都中央区木挽町に拠点を置き、青木三千雄氏が初代代表取締役社長に就任しました。会社の基盤が固まるにつれて事業規模も拡大し、1964年には現在の所在地である東京都新宿区矢来町へと本社を移転しました。

書籍出版に加え、専門性の高い雑誌の刊行も中外医学社の重要な活動の一つです。1975年には、臨床現場に役立つ情報を提供する医学雑誌『臨床医』を創刊。さらに、1983年には神経科学分野の専門的な知見を発信する『Clinical Neuroscience』を創刊するなど、特定の領域における最新の研究成果や臨床例を迅速に届ける媒体としても貢献してきました。

経営体制においては、2000年に創業者である青木三千雄氏が代表取締役会長に、青木滋氏が代表取締役社長に就任しました。この頃から、医学書出版業界の多様化に対応するため、医師や研究者だけでなく、看護師、薬剤師、コメディカルといった幅広い医療関係者を対象とした書籍の企画・出版にも注力するようになります。また、情報技術の進展に応じ、2011年からは既刊の書籍の電子書籍化にも着手し、読者がデジタル環境で医学情報にアクセスできる環境整備を進めています。

出版物の紹介

中外医学社は、多岐にわたる医学分野の専門書やシリーズを刊行しています。設立初期から続く代表的なシリーズとしては、1955年に始まった「質疑応答集」や、医学の基礎知識を体系的に学ぶことができる「中外医学双書」（1963年〜）があります。臨床医の実践に役立つものとしては、「General Practitioner 選書」（1968年〜）や、症例を通じて診断能力を養う「診断演習」（1970年〜）、疾患別の対応を解説する「SAS シリーズ」（1977年〜）などが挙げられます。

学習者向けのシリーズも充実しており、医師国家試験対策のための「国試からみた各科シリーズ」（1980年〜）や、救急医療現場での対応を詳述した「救急治療シリーズ」（1984年〜）などがあります。最新の研究動向や特定の専門領域に焦点を当てたシリーズとしては、各専門分野の年間レビューをまとめた「Annual Review」（1985年〜）、血液学や免疫学の最新知見を紹介する「血液学ハイライト」（1992年〜）、「免疫学ハイライト」（1994年〜）などがあります。

近年では、多様な医療職種のニーズに応えるため、コメディカルスタッフ向けの専門基礎知識を解説する「コメディカルのための専門基礎分野テキスト」（2004年〜）シリーズも刊行しています。単行本においても、特定の専門分野を深く掘り下げた書籍が多く、例えば「カラーアトラス脊椎・脊髄外科」（2012年）のような、豊富な図版を用いた解説書なども出版しています。

これらの出版活動を通じて、中外医学社は日本の医学・医療分野における知識の普及と発展に貢献しています。その発行物の多くは、国立国会図書館デジタルコレクションなどでも閲覧可能となっており、学術資料としても貴重な存在となっています。

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