中山太郎 (民俗学者)

中山太郎：異色の民俗学者

中山太郎（1876年11月13日 - 1947年6月13日）は、明治から昭和にかけて活躍した民俗学者です。柳田國男、折口信夫らと並び称されますが、その研究手法や対象は、彼らとは一線を画していました。

生涯

栃木県足利市に生まれた中山は、雑貨商の家に育ちました。幼少期は小学校を中退し、父から古典のスパルタ教育を受けました。その後、東京専門学校（現早稲田大学）で法律を学びましたが、俳諧や新聞記者を経て、民俗学へと傾倒していきます。

柳田國男の「郷土研究」に感銘を受け、柳田を訪問。博文館に入社し、「郷土研究」「風俗画報」などに寄稿を始めました。しかし、フィールドワークを重視する柳田の主流民俗学に対し、中山は文献資料を आधारとする研究を続け、「歴史的民俗学」を標榜しました。

研究

中山民俗学の根幹は、図書館で地誌類を渉猟し作成した三万枚ものカードでした。その読書量から、柳田に「上野の図書館の本を全て読もうとした男」と評されたほどです。

売笑、婚姻、巫女、若者、盲人など、当時の民俗学では扱われにくいテーマに取り組み、編年史としてまとめ上げることを志しました。中でも『日本巫女史』は、柳田から「読んで余りに面白い」と評される一方で、「史料が雑駁」という批判も受けました。

交流

柳田國男との交流は、「郷土研究」を通じて始まりましたが、次第に疎遠となっていきます。特に、中山が南の『南方随筆』の編集に携わったことが、柳田の怒りを買い、絶縁状態となりました。

折口信夫とも親交がありましたが、1934年の中山の出版祝賀会での発言がきっかけで関係が悪化。久我家文書を巡る騒動に発展し、國學院の郷土研究会との溝も深まりました。

著書

『日本売笑史』（1906年）
『土俗私考』（1926年）
『日本民俗志』（1926年）
『日本婚姻史』（1928年）
『日本巫女史』（1930年）
『日本若者史』（1930年）
『日本盲人史』（1934年）
『愛慾三千年史』（1935年）
* 『万葉集の民俗学的研究』（1962年）

評価

中山太郎は、その独特な研究手法とテーマ設定から、民俗学界では異端の存在と見なされることもありました。しかし、タブーに果敢に挑み、社会の周縁に生きる人々に光を当てた功績は、高く評価されています。

死後

1947年、糖尿病による腎臓炎で死去。没後も、その著作は読み継がれ、再評価の機運が高まっています。近年では、礫川全次編『中山太郎土俗学エッセイ集成 タブーに挑む民俗学』が出版され、新たな読者を獲得しています。

中山太郎は、民俗学の可能性を広げた、先駆的な研究者でした。彼の業績は、現代社会においても重要な意義を持ち続けています。

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