中嶋隆

中嶋隆：近世文学研究の第一人者にして小説家

中嶋隆氏(1952年-)は、日本の国文学界において、近世文学、とりわけ浮世草子研究で高い評価を得ている著名な学者です。同時に、小説家としても成功を収めており、学術と創作の両分野で卓越した業績を残しています。

長野県小諸市に生まれた中嶋氏は、都立九段高等学校を経て、早稲田大学第一文学部日本文学専攻を卒業。その後、同大学大学院に進み、博士課程を修了しました。1997年には、「初期浮世草子の研究」という力作で、早稲田大学より文学博士号を取得。その専門性は、井原西鶴をはじめとする近世の浮世草子に深く及びます。

学究生活においては、大谷女子大学、横浜国立大学、そして早稲田大学教育学部と、キャリアを重ね、1996年には早稲田大学教授に就任。2023年に同大学を定年退職するまで、後進の育成と研究活動に尽力しました。NHK Eテレの「古典への招待」講師も務めるなど、古典文学の普及にも大きく貢献しています。

彼の研究成果は、数多くの著書・論文に結実しています。単著としては、『世間子息気質・世間娘容気 江戸の風俗小説』、『西鶴と元禄メディア その戦略と展開』、『初期浮世草子の展開』など、近世文学研究における重要な著作が多数あります。さらに、西鶴作品に関する研究書も複数出版しており、その深い理解と造詣の深さがうかがえます。これらの研究活動を通じて、浮世草子というジャンルへの理解を深め、新たな知見を提供し続けています。

一方、小説家としての活動も盛んです。2007年には、『廓の与右衛門控え帳』で第8回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビューを果たしました。この作品は高い評価を受け、彼の小説家としての才能を広く知らしめることとなりました。その後も、『はぐれ雀』、『補陀落ばしり物語』など、複数の小説を発表し、学術研究の成果を活かした、深い歴史的知識と巧みな表現力で読者を魅了し続けています。

さらに、中嶋氏の活動は、単著や小説執筆にとどまりません。共編著書、校訂、分担執筆など、多岐に渡る活動を通じて、近世文学研究に大きく貢献しています。例えば、『くずし字速習帳 近世版 本篇』、『21世紀日本文学ガイドブック 4 井原西鶴』などの共編書は、多くの研究者や学生にとって貴重な教材となっています。また、『初期浮世草子』の校訂などを通して、古典文学の正確な理解と普及に尽力しています。

中嶋隆氏の活動は、学術研究と創作活動の両面において、日本の近世文学研究、ひいては日本の文化の発展に大きく貢献しています。その幅広い知識と深い洞察、そして優れた文章力によって、今後も日本の国文学界を牽引していく存在となることは間違いありません。

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