中心性漿液性脈絡網膜症

中心性漿液性脈絡網膜症（英: central serous chorioretinopathy）は、眼科領域で知られる疾患の一つであり、網膜の中でも特に重要な部分である黄斑に、限局性の漿液性網膜剥離を引き起こす状態を指します。

患者像と発症要因

この疾患は、30歳前後の比較的若い男性に多く見られる傾向があり、通常は片眼に発症します。患者は、視野の中心が見えにくくなる中心暗点、物が歪んで見える変視症、または物が実際よりも小さく見える小視症といった症状を自覚することがあります。

発症の正確な原因はまだ特定されていませんが、精神的なストレスが発症の修飾因子として関与していると考えられています。また、ステロイド性抗炎症薬の使用も、この疾患の発症リスクを高める要因の一つとして知られています。ステロイドは、経口薬、皮膚への塗布薬、吸入薬など、様々な形態で使用されることがあり、これらの経路で投与されたステロイドが副作用として中心性漿液性脈絡網膜症を引き起こす可能性があります。さらに、女性の場合、妊娠中に発症するケースも報告されています。

治療と予後

中心性漿液性脈絡網膜症は、多くの場合、3～6ヶ月以内に自然に治癒することが期待できます。しかし、治癒までの期間を短縮するために、レーザー光凝固療法が選択されることもあります。この治療法では、漏出点（網膜剥離の原因となっている血管からの液漏れ箇所）を特定し、レーザーを照射して凝固させます。ただし、黄斑部は視力にとって非常に重要な領域であるため、レーザー治療による損傷を避けるために、通常は黄斑への直接的な光凝固は行われません。代わりに、循環改善薬を使用して、網膜への血流を改善し、自然治癒を促進する方法が用いられます。ステロイド性抗炎症薬は、この疾患には効果がないとされています。

また、十分な睡眠を確保することも重要です。睡眠不足は、後遺症を悪化させる可能性があるため、規則正しい生活習慣を心がけることが推奨されます。

注意点

もし、中心暗点や変視症などの症状が現れた場合は、速やかに眼科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。早期発見と適切な対応により、視力への影響を最小限に抑えることができます。

関連項目

* 加齢黄斑変性

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