中性化

中性化（Carbonation）とは

中性化は、鉄筋コンクリートが劣化する過程で、外部の二酸化炭素がコンクリート内部に侵入し、アルカリ性の環境を中性的に変化させる現象です。コンクリートは主成分がセメントであり、内部は本来アルカリ性です。しかし、外部からのCO2が浸透することで、コンクリート内の細孔溶液のpHが低下し、鋼材を囲む不動態被膜が失われます。この結果、鋼材の耐腐食性が低下し、構造物の性能に影響を与えることになります。

中性化のメカニズム

コンクリート内で中性化が進行すると、鉄筋やその他の鋼材が腐食し始めます。腐食生成物の体積が膨張することにより、コンクリートにひび割れや剥離が発生し、耐荷力が低下します。また、ひび割れた部分からのCO2の追加侵入がさらなる中性化を引き起こし、劣化を一層進める要因となります。研究によれば、湿潤状態のコンクリートよりも乾燥状態において中性化の進行が速いことが知られています。なお、中性化が進行した場合でも、無筋コンクリートでは全体の強度が必ずしも低下しないため、特に問題が生じるわけではありません。

中性化の進行は、以下の式でとらえられます。

$$y = b \sqrt{t}$$
$$y$$：表面からの中性化深さ（mm）
$$t$$：時間（年）
$$b$$：中性化速度係数（mm/√年）

予防策

中性化による影響を抑えるためには、建物の設計や施工においていくつかの予防策があります。まずは水セメント比を小さくし、密実性の高いコンクリートを使用することで、CO2の侵入を抑制できます。また、コンクリートの養生期間を長く設けることで表面が乾燥するのを防是重要です。

さらに、構造物に対するコンクリートのカバーを厚くするとともに、表面の塗装を行うことも、中性化の進行を遅らせる有効な手段です。しかし、これらの対策は建設時にコストを増加させるため、構造物の重要性、腐食環境や耐用年数などに応じて適切に選択する必要があります。

維持管理

初期点検

中性化の進行は施工品質に大いに影響されるため、初期段階での点検が重要です。施工記録も含めた点検を行い、ひび割れや欠陥がある場合は、どのような補修が必要かを検討します。それに基づいて維持管理計画を策定します。

定期点検・詳細調査

中性化に対する点検は主に外観検査として行われますが、問題が発生していなければ目立った変化はないことが一般的です。中性化の進行を確実に測定するには、コアサンプルの採取や電気化学的手法を用いることが考えられます。その結果から今後の中性化の進行を予測し、必要に応じて補強や補修が行われます。

劣化対策

中性化が進行した構造物に対する補修方法には、コンクリート表面の被覆を行う表面被覆工法や、劣化部分を除去・補修する断面修復工法、再アルカリ化を図るために電流を流す再アルカリ化工法などがあります。また、補強方法としては、鋼板やFRPの接着工法や、部材の厚さを増やす方法、外ケーブルを使ってプレストレスを与える手法も検討されます。

これらの対策を通じて、中性化による鉄筋コンクリートの劣化を防ぎ、構造物の寿命を延ばすことが可能です。

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