中所得国の罠

中所得国の罠とは

中所得国の罠とは、開発途上国が経済成長を遂げて中所得水準に到達した後、成長が停滞し、高所得国には至らない状態を指します。この概念は2007年に世界銀行が発表した『東アジアのルネッサンス』において初めて取り上げられました。

概要

多くの新興国は、安価な労働力などを背景に急速に経済成長を遂げ、中所得国家（個人あたりGDPが3,000ドルから10,000ドル）に到達します。しかし、労働力のコストが上昇するにつれて、工業品の競争力が低下し、成長が鈍化してしまうという現象が見られます。このような傾向は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、マレーシア、メキシコ、タイなどの国々において顕著であり、一人当たりGDPが10,000から12,000ドルを突破することが困難です。

統計的に見ても、中所得国から高所得国への移行が極めて難しいことが確認されています。開発経済学の見地からも、低所得国から中所得国に成長した例は多数ありますが、中所得国から高所得国へ移行した国はわずかです。安定して成長を続けた国々としては、日本、アメリカ、韓国、香港、そしてシンガポールが挙げられます。アジア開発銀行の2011年の報告書『アジア2050』によると、2050年までに世界全体のGDPに占めるアジアの割合は52%に上ると予測されますが、中所得国の罠に陥った場合、これが31%にとどまる可能性があります。

中所得国の罠を回避するための方策

中所得国の罠を克服するためには、経済構造の変革が必要です。この変革は産業の高度化だけでなく、「規模の経済」を活用し、中産階級の拡大によって内需や購買力を増加させることも重要です。そのために、インフラや教育への投資が極めて重要です。

具体的な成功例として、1990年代末に中所得国の罠に直面した韓国と台湾があります。これらの国々は、電機やIT分野で産業の高度化を果たし、高所得国へと成長しました。特に、これらの国では教育の質の向上や技術革新が重要な役割を果たしました。

まとめ

中所得国の罠は多くの国が直面する課題ですが、適切な政策と戦略によって克服可能です。経済構造の転換を促進し、持続可能な成長を実現するためには、政府、企業、教育機関が一体となって取り組むことが求められます。今後の経済戦略を考える上で、この問題の理解は非常に重要です。

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