中日劇場

中日劇場の歴史と特徴

中日劇場（ちゅうにちげきじょう）は、愛知県名古屋市中区の中日ビル内に存在していた劇場です。その歴史は1966年5月に遡ります。当初、中日新聞社は「中部日本新聞」を「中日新聞」と改題したことを記念し、同年の9階に劇場を開設しました。この劇場は日本で唯一、新聞社が直営する劇場であり、東海地区の文化の一端を担う重要な存在として成長しました。御園座や名鉄ホールと並んで、名古屋の三大劇場の一つとしても知られています。

中日劇場はその構造から「空中劇場」と称されました。これは、劇場の大空間を低層階に設け、その上にオフィスを積み重ねる独特な建築方法によるものです。このため、設計上のコストを抑えつつ、舞台の機構を工夫する必要がありました。その結果、舞台セットは搬入リフトを使用して運搬されましたが、強風時には使用できないという制約がありました。さらに、舞台には大迫りや小迫り、スッポン、プロセニアムなどが備えられ、演出の幅が広がりました。特に、客席上空を斜めに横切る宙乗り演出は30メートルの高さを持ち、観客を魅了しました。

この劇場では、多くの記憶に残る公演が開催されました。1984年の「當世流小栗判官」では、特別な宙乗り演出が行われ、市川猿之助が客席の上を飛び越える大胆なパフォーマンスが披露され、日本で初めての試みとして注目を集めました。

しかしながら、時が経つにつれて中日ビル自体の老朽化が進行し、建て替えが必要となったため、劇場は2018年3月末に営業を終了しました。最終公演では1966年のこけら落としと同じく、中京五流舞踊の特別公演が行われ、多くのファンがこの日を見届けました。閉館の背景には、団体観劇の減少や観劇環境の厳しさも影響していたとされます。

中日劇場が閉館してから1年後の2019年3月29日から31日には、劇場閉館前のイベントが行われ、一般公開が実現しました。その後、中日ビルは建て替えが進められ、現在では「中日ホール&カンファレンス」として新たに生まれ変わっています。この新しいホールは、650席収容のシアターモード、432席収容のセミナーモード、そして500人収容の立食パーティーモードと多様に利用可能な施設として設計されています。

中日劇場では、年に数回、宝塚歌劇団の公演や松竹・東宝製作の特別公演が行われ、さらには名古屋をどり、桂米朝一門会、中京五流舞踊公演、吉本新喜劇など、バラエティ豊かなプログラムが提供されていました。また、2013年から2018年にかけては「中日文楽」と称される文楽の特別公演も実施され、多くの観客を魅了してきました。これらの多彩な文化的イベントは、中日劇場が名古屋の文化の中心としての役割を果たしていたことを物語っています。

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