中村一 (造園学者)

中村一（なかむら まこと）氏は、1931年1月1日に台湾の台南市で生まれ、後に和歌山県出身となる日本の造園学者です。京都大学名誉教授であり、日本造園学会の会長も務めました。愛称は「ピンさん」として親しまれています。専門は造園学であり、日本庭園や歴史遺産に関する研究に深く携わっています。

経歴

中村氏は、1953年に京都大学農学部林学科を卒業後、1955年に同大学大学院農学研究科林学専攻の修士課程を修了しました。その後、京都大学の助手、講師、助教授を経て、1975年に京都大学農学部教授に就任しました。1972年からは、岡崎文彬氏の後を引き継ぎ、京都大学農学部林学科造園学講座の主任教授として、後進の育成に尽力しました。また、レクリエーションや造園の本質的な意味について深く研究を行いました。同期には、同じく造園学者の近藤公夫氏がいます。

研究と業績

中村氏の研究は、造園学の理論と実践の両面に及びます。特に、日本庭園の歴史的背景や文化的価値に関する研究は高く評価されており、その知見は多くの著書や論文で発表されています。

1959年には、名古屋市白川公園計画懸賞公募で二等入選を果たしました。1989年には、日本造園学会の会長に就任し、学会の発展に貢献しました。1993年には、京都造形芸術大学環境デザイン学科の教授となり、教育活動にも力を注ぎました。1994年には、日本公園緑地協会の北村賞を受賞し、その功績が認められました。2002年には、日本造園学会賞上原敬二賞を受賞しています。

2003年には、京都大学の名誉教授となりました。また、文化庁文化財保護審議会第三調査会委員、京都府文化財保護審議会委員、京都市文化財保護審議会委員など、数多くの委員も歴任しました。

主な著書と訳書

中村氏は、多数の著書を執筆しており、その中には『風景をつくる―現在の造園と伝統的日本庭園』(共著、昭和堂、2001年)、『造園の歴史と文化』(共著、養賢堂、1987年)、『造園修景大事典』(造園修景大辞典編集委員会編 1980年、同朋舎出版)などがあります。また、訳書として『景観論』(ガレット・エクボ著、鹿島研究所出版会、1972年)があります。これらの著作は、造園学を学ぶ学生や研究者にとって貴重な資料となっています。

主な作品

中村氏が携わった主な作品には、香里団地計画における緑地計画、米国ドーズ樹木園内日本庭園、愛知県緑化センター、姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」、オランダ・デンヘルダー市内日本庭園などがあります。これらの作品は、中村氏の造園に対する深い理解と卓越した技術を示しています。

参考文献

中村氏の研究に関する参考文献として、以下の論文があります。

中村一、「世界の国立公園成立の政治経済的側面」『造園雑誌』1984年 48巻 5号 p.43-48, doi:10.5632/jila1934.48.5_43, 日本造園学会
中村一、尼崎博正、白幡洋三郎 中村一先生（人物インタヴュー・第21回上原敬二賞受賞者）『ランドスケープ研究』2004年3月号 67巻 4号 p.327-330, NAID 110004308465

これらの論文は、中村氏の幅広い研究活動を理解する上で参考になります。

中村一氏は、その教育者、研究者、実践家としての多岐にわたる活動を通じて、日本の造園文化の発展に大きく貢献しました。彼の業績は、今後も長く後世に語り継がれていくことでしょう。

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