中村兼三

中村兼三：努力で掴んだ五輪の金メダル

中村兼三（なかむら けんぞう）は、1973年10月18日生まれ、福岡県福岡市出身の柔道家です。1996年アトランタオリンピック柔道男子71kg級で金メダルを獲得しました。東海大学卒業。身長178cm。得意技は内股、寝技。

生い立ちと柔道との出会い

1973年、福岡県福岡市で八百屋を営む家庭の三男として生まれました。5歳の時、兄の影響で地元の東福岡柔道教室に通い始め、柔道を始めました。当初は遊び感覚でしたが、ロサンゼルス五輪での山下泰裕の金メダルに感銘を受け、兄弟でオリンピックを目指すことを誓い、真剣に柔道に取り組むようになりました。

しかし、兄弟と比べて目立った才能はなかった兼三は、母親から柔道を辞めるよう言われたり、教師から陸上競技への転向を勧められたりすることもあったそうです。香椎第3中学校時代には、兄たちの胸を借りて稽古に励みましたが、中学3年次の全中予選では、奥襟による反則で敗退してしまいます。この敗北を機に、「強くなりたい」という気持ちが芽生えたと後に語っています。

中学卒業後は、兄たちも進学した東海大五高校に進学。立技ではなく、練習量がものをいう寝技を重点的に練習し、寝技を中心とする勝ちパターンを確立しました。高校3年次の1991年には、春の高校選手権で3位、夏のインターハイでは優勝を果たしました。また、全日本新人体重別選手権では2位に入り、兄とともに表彰台に上がりました。

大学、そしてオリンピックへ

高校卒業後は東海大学に進学し、寝技中心のスタイルを確立。出稽古に来ていた韓国選手との稽古を通じて、独自の横三角絞を開発し、得意技としました。大学2年次の講道館杯では優勝を果たし、全日本学生体重別選手権でも優勝。古賀稔彦を追う存在として注目を集めました。1996年、旭化成に入社。

そして迎えたアトランタオリンピック。他の階級で金メダルを逃す選手が続出する中、中村は71kg級に出場。決勝では、残り3秒で追いつき、判定の末に勝利。兄弟の中で最初にオリンピック金メダリストとなりました。

オリンピック後と引退

オリンピック翌年の1997年、世界選手権で優勝。しかし、その後は徐々に成績が下降し、2000年シドニーオリンピックでは敗退。3度目のオリンピックを目指し、階級を81kg級に変更しましたが、2004年に引退しました。

引退後は指導者として活動し、旭化成柔道部のコーチ、全日本ジュニアコーチ、全日本シニア専任コーチなどを歴任。2013年からは旭化成柔道部の監督、2019年からは総監督を務め、後進の育成に尽力しています。また、全日本男子強化副委員長にも就任し、東京オリンピックに向けてチームを強化しました。

主な戦績

1991年：全国高校柔道選手権（無差別）3位
1991年：全国高等学校総合体育大会（柔道・軽中量級）優勝
1993年：講道館杯全日本柔道体重別選手権大会（71kg級）優勝
1996年：アトランタ五輪（柔道・71kg級）優勝
1997年：パリ世界柔道選手権大会（71kg級）優勝
2000年：講道館杯全日本柔道体重別選手権大会（81kg級）優勝
* 2003年：嘉納杯国際柔道大会（81kg級）優勝

中村兼三は、努力と粘り強さでオリンピックの金メダルを掴み取った柔道家です。引退後は指導者として、その経験と知識を若い世代に伝えています。

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