中村浩志

中村 浩志

中村 浩志（なかむら ひろし）氏は、1947年にこの世に生を受けた日本の著名な鳥類学者です。信州大学名誉教授であり、現在は一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所の代表理事として、鳥類研究と保全活動の第一線で活躍されています。特に、托卵という独特な繁殖戦略を持つカッコウや、高山という厳しい環境に適応して生きるライチョウの生態研究を専門としてきました。1981年には京都大学より理学博士の学位を授与されています。

長野県埴科郡坂城町に生まれた中村氏は、地元の坂城町立坂城中学校、長野県屋代高等学校を経て、信州大学教育学部小学校教員養成課程を1969年（昭和44年）に卒業しました。その後、鳥類学への探求を深めるため、京都大学大学院理学研究科動物生態学専攻へと進み、1974年（昭和49年）に博士課程を修了しています。

研究者としてのキャリアは、1980年（昭和55年）に母校である信州大学教育学部生態学研究室の助手として始まりました。生態学の分野で教育と研究に携わり、1986年（昭和61年）には助教授、そして1992年（平成4年）には教授へと昇進しました。長きにわたり信州大学で教鞭を執り、多くの後進を育成するとともに、自身の研究を進めました。2012年（平成24年）に信州大学を退官された後も、鳥類研究への情熱は衰えることなく、2015年（平成27年）には長野市に一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所を設立し、研究活動の新たな拠点としています。

国際的な活動も積極的に行われており、1994年（平成6年）からはケンブリッジ大学に留学し、海外の研究者とも交流を深めました。専門とするライチョウの研究においては、2000年（平成12年）にライチョウ会議の議長を務めるなど、その知見は広く認められています。また、日本の鳥類学界においても重要な役割を果たし、2006年（平成18年）から2009年（平成21年）までの期間、日本鳥学会の会長を務めました。

中村氏の長年の研究成果や、自然保護への思いは、多くの著作として結実しています。自然や鳥の生態に関する著述活動は多岐にわたり、一般の読者にも分かりやすい形でその魅力を伝えています。

主な編著書には以下のようなものがあります。

『戸隠の自然』（信濃毎日新聞社 1991年）
『軽井沢の自然』（信濃毎日新聞社 1992年）
『カケスの森』（フレーベル館 1998年）
『千曲川の自然』（信濃毎日新聞社 1999年）
『甦れ、ブッポウソウ ネイチャー・ストーリーズ』（山と渓谷社 2004年）
『雷鳥が語りかけるもの ネイチャー・ストーリーズ』（山と溪谷社 2006年）
『歩こう神秘の森戸隠』（信濃毎日新聞社 2011年）
『二万年の奇跡を生きた鳥ライチョウ』（農山漁村文化協会 2013年）
『ライチョウを絶滅から守る!』（しなのき書房 2018年）
『野鳥の生活 森に棲む鳥』（遊行社 2021年）

これらの活動は高く評価されており、数々の賞を受賞しています。

主な受賞歴は以下の通りです。

1970年 日本鳥学会奨学賞
2002年 山階芳麿賞
2019年 信毎賞
2021年 安藤忠雄文化財団賞

中村浩志氏は、カッコウやライチョウといった特定の種に深く切り込んだ生態研究を通じて、鳥類の知られざる生活を明らかにしてきました。その成果は学術的な貢献にとどまらず、著作活動や講演などを通じて広く社会に還元され、自然保護や環境教育にも大きな影響を与えています。地元長野県を中心に、設立した国際鳥類研究所を拠点として、今後も鳥類研究および保全活動に情熱を注ぎ続けることが期待されています。

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