中村翫雀 (3代目)

三代目 中村 翫雀の生涯と芸風

三代目中村翫雀（なかむらかんじゃく）、本名は不詳、1841年に京都伏見で誕生し、1881年に他界した彼は、幕末から明治期にかけて日本の伝統芸能である歌舞伎界で活躍しました。定紋は寒雀の中に「翫」、屋号は成駒屋という名の元、彼はその類まれな才能をもって多くの観客を魅了しました。

幼少期と早期のキャリア

翫雀の父は淀藩の与力を務めた飯田直次郎でした。幼少の頃、彼は髪結床に養子として迎えられましたが、1851年、当時の人気歌舞伎役者である二代目嵐璃珏に弟子入りし、四代目嵐珏蔵の名前で舞台に立ちました。その後、四代目中村歌右衛門の未亡人に認められ、彼の位牌養子となったことで、歌舞伎界での地位を確立しました。

名乗りと著名な存在の形成

1864年、翫雀は成功裏に三代目中村翫雀を襲名しました。彼はその後、若手花形役者として大坂の舞台で活躍し、初代實川延若と共演することで名声を高めます。彼らは「道頓堀の三大将」として知られ、目立つ存在となりました。明治時代には東京の舞台にも立ち、四代目中村芝翫と兄弟の盃を交わし、両地での活動を強化しました。

その中で、彼は五代目中村歌右衛門の有力候補と期待されるまでになりましたが、1881年、病に倒れ、実子・鴈治郎に看取られながら53歳でこの世を去ります。彼の墓所は大阪市の常国寺にあります。

性格と芸風の特徴

彼は温厚な性格であり、古い役者の型を熟知していたため、多くの役者から尊敬を受け、特に九代目市川團十郎からも厚い信頼を寄せられていました。体格は小柄でしたが、その表現力豊かな演技と優れた容姿、さらには口跡も良く、立役・女形の双方で卓越した才能を発揮しました。彼の和事に対する本格的な技術は、後に実子である初代中村鴈治郎に受け継がれることになります。

鴈治郎との親子関係

翫雀は大坂新町の妓楼「扇屋」の一人娘である林妙と結婚して一子、玉太郎を授かりました。玉太郎が後に初代中村鴈治郎として歌舞伎界で名を馳せることになります。しかし、彼が被差別階級であった歌舞伎関係者との結婚に対し義母が難色を示したため、一時期舞台から遠ざかることになります。その後、舞台への情熱に押されて復帰し、養父母との縁を断ちました。この出来事は、後年、鴈治郎にとって複雑な感情をもたらすことになりました。

彼は明治10年に父と再会しますが、母に関することは告げませんでした。この親子の再会は、歌舞伎の伝統を繋ぐ重要な瞬間となりました。翫雀の影響と教えは、次世代へとしっかりと受け継がれ、彼の存在は歌舞伎の歴史に於いて決して枯れない重要な一部となるのです。

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