中村芝雀

中村芝雀 ― 歌舞伎の名跡を彩る系譜

中村芝雀は、歌舞伎界において重要な名跡の一つです。初代から七代目まで受け継がれてきたその歴史は、華麗なる歌舞伎の世界と深く結びついています。本稿では、各代ごとの経歴や師匠、襲名までの道のり、そして名跡にまつわる興味深いエピソードを紐解いていきます。

初代 中村芝雀 (1820-1856)

初代中村芝雀は、四代目中村歌右衛門の門下からこの名跡を襲名しました。市川白之助を名乗り、中村翫之助、二代目中村鶴五郎を経て、ついに初代中村芝雀となりました。その芸歴は、歌舞伎界に新たな風を吹き込んだと伝えられています。

二代目 中村芝雀 (1841-1895)

二代目は初代の門人として、中村芝之助を経て二代目中村芝雀を襲名。さらに、二代目中村雀右衛門へと名跡を継承しました。初代から続く芝雀の系譜は、二代目に至ってより一層輝きを増していきます。

三代目 中村芝雀 (1856-1890)

三代目は二代目の養子として、中村三之助から三代目中村芝雀を襲名しました。短い芸歴ながらも、その存在感は後世に大きな影響を与えたと言われています。

四代目 中村芝雀 (1875-1927)

四代目は三代目の養子。実父は嵐璃笑という人物です。嵐笑太郎、中村笑太郎を経て四代目中村芝雀を襲名し、その後三代目中村雀右衛門へと名跡を継承しました。この代においても、芝雀と雀右衛門の名跡は密接な関係にあったことが分かります。

贈五代目 中村芝雀（中村章景）(1918-1939)

四代目の実子である中村章景は、後に上京し六代目尾上菊五郎に入門しました。しかし、陸軍に入隊後、戦地で病死。戦後、五代目中村芝雀として追贈されました。短い生涯でしたが、彼の存在は、芝雀の名跡に深い悲しみと同時に、その輝かしい歴史の一ページを刻みました。

六代目 中村芝雀 (1927-1962)

六代目は三代目中村時蔵の次男。二代目中村梅枝を名乗り、播磨屋から六代目中村芝雀を襲名。その後、四代目中村時蔵を襲名しました。この代は、播磨屋という屋号を背景に、新たな芝雀像を築き上げたと言えるでしょう。

七代目 中村芝雀 (1955- )

七代目は四代目中村雀右衛門の次男。初代大谷廣松を経て、七代目中村芝雀を襲名し、その後五代目中村雀右衛門となりました。現在も活躍を続ける七代目は、伝統を受け継ぎながら現代の歌舞伎界を牽引する存在です。

屋号と定紋

初代は新駒屋、二代目以降は京屋を屋号としていました。定紋は京屋結び、替紋は向い雀と、その伝統はしっかりと受け継がれています。

中村雀右衛門との関係

中村芝雀と中村雀右衛門は、多くの場合、芝雀が先に襲名され、その後雀右衛門を襲名するという順序で名跡が受け継がれてきました。これは、両名跡の深い繋がりを示す、興味深い事実です。

まとめ

初代から七代目まで続く中村芝雀の名跡は、歌舞伎の歴史と発展を象徴する存在です。それぞれの代が持ち味を発揮し、名跡の伝統を守り、進化させてきました。今後も、七代目以降、中村芝雀の名が、歌舞伎界を華やかに彩り続けることでしょう。

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