中村芳子

中村芳子（なかむら よしこ、1920年10月30日 - 1987年12月3日）は、日本の女優、そして太夫として、その生涯を舞台に捧げた人物です。本名は渡辺芳子。歌舞伎役者である四代目中村富十郎を夫に、長男には初代中村亀鶴を持ち、父は初代中村鴈治郎という、芸能一家に生まれました。

1933年、西六尋常小学校を卒業した同年、舞台「碁盤太平記・山科閑居」で初舞台を踏みました。彼女の父の生家は、大阪新町の妓楼・扇屋であり、そこが初代夕霧太夫ゆかりの店であったという縁から、1980年11月には夕霧太夫を襲名しました。

特筆すべきは、毎年11月第2日曜日に、初代夕霧太夫ゆかりの寺である京都・嵯峨の清凉寺にて開催される「夕霧供養祭」を始めたのが彼女であるということです。この供養祭は、彼女の死後も現役の太夫によって引き継がれ、現在も続けられています。島原の太夫として活躍した後、1987年12月にその生涯を閉じました。彼女の功績を讃え、翌年の1988年11月には清凉寺に歌碑が建てられました。

彼女が残した歌には、太夫としての誇りと、人生の儚さが込められています。

『あでやかに 太夫となりて 我死なん 六十路過ぎにし 霧はかなくも』

これは、彼女が60歳を過ぎてもなお、太夫として美しく生きたいという願いと、人生の終わりが近いことを悟りながらも、その儚さを嘆く心情を表しています。

彼女の出演作品は多岐にわたり、映画界でもその存在感を発揮しました。女優としての活動に加え、夕霧太夫という名跡を守り、後世に伝えるための活動は、彼女の並々ならぬ情熱と責任感を示すものであり、多くの人々に感銘を与えました。

中村芳子は、女優、太夫としての才能と、その生き様を通して、多くの人々に感動を与え続けた、まさに昭和を代表する人物と言えるでしょう。

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