中編小説

中編小説とは

中編小説（ちゅうへんしょうせつ、英: novella）は、文学の一形式で、短編小説よりも長く、長編小説よりは短い作品を指します。日本では、原稿用紙で約100枚以上300枚未満の長さが一般的であり、アメリカでは17,500文字から40,000文字の範囲とされています。とはいえ、これらの定義は絶対的ではなく、文献によって異なる場合があります。

定義の曖昧さ

中編小説に関しての明確な基準は存在しないため、長編小説と短編小説の境界線も曖昧です。一篇で単独の書籍として発表される場合、一般的には長編小説と見なされることが多いですが、レイアウトやフォントサイズ、ページ数の違いによって、同じ作品でも評価が異なることがあります。たとえば、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』は、分量的には中編に分類されますが、単行本としては長編小説と扱われることもあるのです。

同じく、中公文庫に単独で刊行されている北杜夫の『少年』は、短編と呼んでも差し支えないボリュームですが、それでも中編に含まれる場合があります。多くの場合、通常の字組みで200ページ（原稿用紙350枚程度）を超えることで単独出版や短編を含めて単行本化されるケースが一般的です。このような動向から、一つの境界線と考えることができますが、必ずしも直線的ではないため、幾つかの例外が存在します。

短編との難しい区別

中編と短編の区別は、さらに複雑です。かつては400字詰原稿用紙で100枚を境界とする考え方がありましたが、近年は単行本の長大化に伴って、こうした基準は変化しています。例えば、安東能明の『出署せず』は、短編4つと組み合わせて単行本化されていますが、文庫解説では中編と称されています。また、横溝正史の『本陣殺人事件』は、200ページを少し超えていますが、一般的には長編と見なされています。

江戸川乱歩は、同じフォーマットの文庫本で微妙な分量の作品を多く持つ作家の一人です。例えば、『パノラマ島奇談』が116ページ、『陰獣』が119ページ、『ペテン師と空気男』が123ページ、『地獄の道化師』が133ページですが、最もページ数が多い『地獄の道化師』だけが長編として扱われるのが一般的です。

芥川賞と中編小説

また、日本の権威ある文学賞である芥川賞は、短編小説だけでなく中編小説も対象としているため、これも中編小説の重要な位置付けを示しています。

中編小説は、その長さや内容、発表方法の多様性から、本来の文学形式としての魅力があることを理解しておくことが重要です。

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