丸型ポスト

丸型ポストとは

丸型ポストは、円筒形の形状をした郵便ポストで、その愛らしい姿から「丸ポスト」とも呼ばれています。道路や店舗などに設置され、郵便物を投函するために利用されます。

歴史

丸型ポストの起源は、19世紀のイギリスに遡ります。円柱状の郵便ポストは、英語圏では「Pillar Box」と呼ばれ、クラシカルな形式として知られています。最初のPillar Boxは1859年にイギリスで登場し、現在でもイギリスをはじめ、インド、オーストラリア、香港など、かつてのイギリス植民地を中心に世界各地で見ることができます。香港では「郵筒」と呼ばれています。

日本では、1901年に最初の丸型ポストとして「俵谷式ポスト」と「中村式ポスト」が試験的に設置されました。これらのポストは鋳鉄製でした。1908年には、雨よけのために差出口に回転板を取り付けた「回転式ポスト」が制式化されました。しかし、回転部分の故障が多かったため、1912年には回転板を廃止し、雨よけの庇をつけた「丸型庇付ポスト」が登場しました。これが、ほぼ現在の丸型ポストの完成形となりました。丸型庇付ポストのバリエーションについては、郵便ポストに関する資料を参照してください。

1929年には、航空郵便専用のやや細身のポストが登場しました。また、第二次世界大戦中には、物資節約のため、鋳鉄製のポストからコンクリート製のポストに切り替えられた時期もありました。

戦後の1949年、「郵便差出箱1号（丸型）」が登場し、これが丸型ポストの最終型となりました。しかし、1970年に後継の「郵便差出箱1号（角型）」が登場したことで、丸型ポストの生産と設置は終了しました。

丸型ポストの減少と現状

かつては日本全国に普及していた丸型ポストですが、四角い箱型のポストへの置き換えが進み、その数は激減しました。「郵便差出箱1号（丸型）」は、1972年には全国で約55,000本が稼働していましたが、2013年3月31日時点では約5,600本にまで減少しました。この背景には、箱型ポストが郵便物を貯める袋を交換するだけで収集できるのに対し、丸型ポストは小さな取出し口から手で郵便物をかき出す手間がかかるという事情がありました。

しかし、合理化による置き換えを生き残った丸型ポストは、その希少価値から保存される傾向が強まっています。再開発などで移設される場合でも、四角いポストに置き換えられることなく、丸型ポストがそのまま移設され、継続して使用される事例も出てきています。

また、1984年からは、不要になった丸型ポストが小学校や博物館などに教材用として寄贈されるようになりました。この際、誤投函を防ぐために差入口を封鎖するなどの処置が施されています。

大きさと特徴

「郵便差出箱1号（丸型）」のサイズは、本体の高さが135cm、直径が40cm、庇の横幅が24cmで、重さは約150kgです。

現存状況

現在、丸型ポストは全国的に数が減っていますが、地域によっては景観を考慮して積極的に活用している場所もあります。

東京23区内では、2013年現在で5本しか残っていません。
埼玉県川越市では、蔵造りの町並みや寺社にあるポストは、景観に配慮して丸型ポストが使用されています。
東京都小平市では、2021年現在で37本が現存しており、都内の自治体で最も多い保有数となっています。小平市では、丸型ポストマップを配布したり、丸ポストラリーを開催するなど、地域資源として活用しています。また、イベントを記念して、日本一大きな丸型ポストが設置されました。
兵庫県芦屋市では、2020年8月現在で17本の丸型ポストが現存しており、市内のポストの半数以上が丸型です。
愛知県名古屋市では、2014年現在で4本しか残っていません。
愛知県半田市では、2021年現在で5本の丸型ポストが使われており、そのうち2本は地区の祭礼で山車が通る際に支障が出ないように残されたものです。残りの3本は観光目的で新たに設置されたものです。

ギャラリー

[丸型ポストの画像1]
[丸型ポストの画像2]
[丸型ポストの画像3]
[丸型ポストの画像4]
[丸型ポストの画像5]
[丸型ポストの画像6]

参考文献

* 「郵趣・謎学の旅 さぐってみました! 丸型ポストの現在・過去・未来」『郵趣』1995年9月号、25-29頁。

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