丸山博

丸山 博（まるやま ひろし）

1932年12月5日に長野県上田市で生を受けた丸山博氏は、日本のプロ野球界で長きにわたり審判員を務め、セントラル・リーグ審判部副部長の役職も歴任しました。現役時代の審判員袖番号は「30」でした。

少年期、終戦の年にあたる1945年に旧制上田中学に入学。野球部に入部しましたが、小柄な体格であったため選手としてではなくマネージャーとしてチームを支える道を選びました。その後、新制高校となった上田松尾高校（現在の長野県上田高等学校）を卒業しています。

高校卒業後、丸山氏は長野県高等学校野球連盟での経験を経て、1957年にセントラル・リーグの審判部に入局。ここから、約32年間に及ぶプロ野球審判員としての長いキャリアが始まりました。

セ・リーグにおいて、丸山氏は中心的な審判の一人として活躍し、1989年に引退するまでの間に、通算3515試合という驚異的な出場数を記録しました。その豊富なキャリアに比して、日本シリーズへの出場は1977年と1982年の2回にとどまりましたが、オールスターゲームには6回出場するなど、重要な試合でのジャッジも数多く経験しました。

丸山氏の審判人生の中で、特に語り草となっているのが、歴史的な記録が誕生した瞬間への立ち会いです。1976年10月11日、後楽園球場で行われた読売ジャイアンツ対阪神タイガースの一戦。この試合の8回裏、読売ジャイアンツの王貞治選手が、当時メジャーリーグのベーブ・ルース氏が持っていた通算本塁打記録（714本）を上回る、通算715号となるホームランを阪神の山本和行投手から放ちました。この記念すべき打席で、丸山氏はまさに球審としてホームプレートの後ろに立っていたのです。王選手が本塁打を確信して飛び上がって万歳する姿の傍らで、丸山氏がホームベース近くにしゃがみ込んで判定を確認する様子を捉えた写真は、この歴史的な出来事の象徴として今もなお多くの野球ファンに記憶されています。

一方で、厳正中立な立場が求められる審判員として、時には批判に晒されることもありました。当時のヤクルト監督であった広岡達朗氏からは、「巨人贔屓の審判」であるとして名指しで批判を受けたことも知られています。

1989年に現役審判員としてのキャリアを終えた後も、丸山氏は野球界への貢献を続けました。その豊富な経験と高度な技術を活かし、審判技術の指導者としての道を歩みます。日本国内はもちろんのこと、国外にも活動の場を広げ、特に台湾プロ野球においては、1992年から1994年までの期間、自らも268試合で審判を務めながら、現地の審判員に対する技術指導を行いました。

さらに、プロ野球全体の規則に関する整備にも尽力しています。1999年には日本野球機構（NPB）の審判規則委員に就任。約11年間にわたり、プロ野球の規則の策定や解釈に関する重要な役割を担いました。2010年1月31日をもって同委員を退任しています。

長年にわたり、プロ野球の公正かつ円滑な試合運営、そして後進の育成に多大な貢献をした丸山博氏は、2019年3月28日に86歳で逝去しました。なお、女優の丸山ひでみ氏は丸山氏の姪にあたります。

丸山博氏の長い審判人生は、日本のプロ野球が発展していく重要な時期と重なります。グラウンドでの正確なジャッジ、そして審判技術の継承や規則の整備に尽力したその功績は、今日のプロ野球の確固たる基盤を築く上で欠かせないものでした。

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