丸田頼一

丸田 頼一

日本の造園学界において、都市環境問題、特にその熱環境に関する研究と教育に顕著な功績を残したのが、造園学者であり千葉大学名誉教授の丸田頼一（まるた よりかず、1938年2月4日 - 2020年6月21日）です。都市化の進展に伴うヒートアイランド現象などの熱環境悪化に対し、緑地や水辺が持つ緩和効果を科学的に評価し、その効果的な配置や設計技術の開発に先駆的な役割を果たしました。

経歴と教育者としての足跡

丸田氏は大分県で生まれ、長野県長野市で育ちました。国内外で幅広い知識を吸収し、1964年にはルイジアナ州立大学大学院修士課程を修了。帰国後、東京大学大学院に進み、生物系研究科修士課程を経て、1969年に農学系研究科博士課程を修了し、農学博士の学位を取得しました。大学教員としてのキャリアは1969年に日本大学農獣医学部で始まり、講師、助教授として教育・研究活動に従事。1978年には千葉大学園芸学部に活躍の場を移し、1988年に教授に昇進しました。長年にわたり、造園学、環境情報科学、緑地計画といった分野で多くの後進を育成し、学術の発展に貢献しました。

公職と社会への貢献

大学での教育・研究活動と並行して、関連分野の要職を歴任しました。1997年には環境情報科学センターの理事長に就任し、環境に関する学際的な研究推進に尽力。2000年には千葉大学の評議員を務め、大学運営にも関与しました。さらに、2010年頃には日本公園緑地協会の会長として、公園緑地の整備・利用促進を通じて、豊かで快適な都市環境づくりに貢献しました。2003年に千葉大学を退官後、名誉教授の称号を授与されています。

主な研究業績

丸田氏の代表的な研究業績は、都市空間の熱環境評価と対策技術の開発にあります。緑地が都市の温度上昇を抑制し、人々の快適性を向上させる効果を定量的に分析し、その計画・設計への応用を提案しました。これらの研究は、単に緑を増やすだけでなく、科学的な根拠に基づいた緑地計画の重要性を示し、都市の持続可能性を高める上で不可欠な知見を提供しました。また、景観生態学や環境アセスメントなど、研究対象は多岐にわたり、環境と開発の調和を目指す視点から、都市環境の総合的な改善策を探求しました。

受賞歴

その長年の研究活動と社会貢献に対し、数多くの権威ある賞が贈られています。

1973年：日本都市計画学会賞（論文奨励賞）
1983年：日本造園学会賞（調査・計画部門）
1994年：日本公園緑地協会北村賞
2007年：環境情報科学センター特別賞
2010年：日本造園学会 上原敬二賞
2017年：みどりの学術賞

これらの受賞は、丸田氏の研究成果が関連分野においていかに高く評価されていたかを物語っています。

著書

丸田氏は研究成果や知識の普及にも積極的に取り組み、多くの著書を刊行しました。

『都市緑地計画論』（丸善）
『環境緑化のすすめ』（丸善）
『ランドスケープ計画・設計論』（編著、技報堂）
『そうなんだ!!花や木の伝説と由来100エピソードでつづる植物百科』（監修）
* その他、『環境と開発』の訳著や、『リゾート開発計画論』、『環境都市計画事典』、『防災公園技術ハンドブック』など多数。

これらの著作は、専門家だけでなく一般の人々に対しても、都市環境や緑地の重要性を伝える貴重な資料となっています。

晩年

2020年6月21日、82歳で永眠しました。その死没日をもって、長年の学術研究と社会への貢献に対し、従四位の位階が授けられ、瑞宝小綬章が追贈されました。丸田頼一氏の築き上げた学問的遺産は、今後の都市環境研究と緑地計画の発展に引き続き大きな影響を与え続けるでしょう。

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