丹羽美之
丹羽美之 - メディア・ジャーナリズム研究者
はじめに
日本の社会学者である丹羽美之氏（にわ よしゆき）は、1974年に生まれました。現在、東京大学大学院情報学環の教授を務めており、メディア研究、ジャーナリズム研究、そしてポピュラー文化研究を主な専門分野としています。テレビや記録映画、報道といった様々なメディア形態に焦点を当て、その歴史的変遷、社会的役割、表現方法について深く探求する研究者です。
経歴
丹羽氏は三重県にて生を受けました。東京大学法学部を卒業後、公共放送機関であるNHKに入局し、番組のディレクターとして活動しました。このNHKでの実務経験は、その後の学術研究において、理論的な分析に加え、メディア制作の現場感覚を取り入れる上で重要な財産となっています。
NHKを退職した後、大阪大学大学院人間科学研究科の博士後期課程に進学し、単位を取得して退学。研究者の道を本格的に歩み始めます。法政大学社会学部にて准教授として教鞭をとった後、東京大学大学院情報学環に移籍し、准教授に就任しました。そして2021年からは、同大学院の教授として、新たな研究テーマの開拓や後進の指導にあたっています。
研究活動と主要業績
丹羽氏の研究は、特に日本の映像メディアの歴史と社会的位置づけに重きを置いています。その代表的な成果として、単著『日本のテレビ・ドキュメンタリー』（東京大学出版会、2020年）が挙げられます。この著作では、日本のテレビ・ドキュメンタリーがどのように発展してきたのか、その歴史的な流れや表現の変遷、社会との関わりについて詳細な分析が展開されており、この分野における重要な研究書となっています。
また、日本の記録映画史に関しても精力的に研究を進めており、メディア研究者の吉見俊哉氏と共に「記録映画アーカイブ」シリーズ（東京大学出版会）を共同編集しています。このシリーズは、2012年刊行の『記録映画アーカイブ1 岩波映画の1億フレーム』を皮切りに、『記録映画アーカイブ2 戦後復興から高度成長へ』（2014年）、『記録映画アーカイブ3 戦後史の切断面』（2018年）と続き、日本の記録映画という貴重な文化遺産の発掘と再評価を進めています。これらの活動は、歴史研究における映像史料の重要性を改めて提示するものです。
編著としては、日本のテレビ報道を代表する番組の一つである『NNNドキュメント』の半世紀にわたる歴史をまとめた『NNNドキュメント・クロニクル 1970-2019』（東京大学出版会、2020年）があります。これは、特定の報道番組の歩みを追うことで、日本のジャーナリズムが社会の変化といかに向き合ってきたかを読み解こうとする試みです。
さらに、東日本大震災発生時のメディア報道を検証した藤田真文氏との共編著『メディアが震えた テレビ・ラジオと東日本大震災』（東京大学出版会、2013年）や、映像編集の理論と実践を結びつけた金井明人氏との共編著『映像編集の理論と実践』（法政大学出版局、2008年）など、幅広いテーマでメディアと社会の関係性を探求しています。これらの著作や論文を通じて、丹羽氏はメディア研究分野における議論を深めることに貢献しています。
現在の活動
現在、丹羽氏は東京大学大学院情報学環の教授として、教育活動と研究活動の中心的な役割を担っています。自身の研究室では、メディア史、ジャーナリズム論、ポピュラー文化論といった専門分野に基づき、学生と共に多角的な研究に取り組んでいます。かつてのNHKディレクターとしての現場経験と、その後の学術的な研鑽に裏打ちされた彼の研究は、メディアの複雑な様相を理解する上で示唆に富むものです。日本のメディア研究の未来を担う人材育成にも力を注いでいます。
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