主計町 (金沢市)

金沢の奥座敷、主計町（かずえまち）

主計町は、石川県金沢市の浅野川沿いに位置する風情ある町です。かつて加賀藩士、富田主計の屋敷があったことが町名の由来となっています。1999年に旧町名が復活し、その美しい景観は、金沢市における旧町名復活運動の先駆けとなりました。

歴史と地理

主計町は、北国街道が浅野川を渡る浅野川大橋のたもとに位置し、茶屋町として明治から昭和初期にかけて繁栄しました。現在も当時の建造物が数多く残されており、金沢の茶屋街の中でも特別な存在感を放っています。金沢には、「ひがし」と呼ばれる東山地区、「にし」と呼ばれる野町地区、そして浅野川沿いの「ながれ」と呼ばれた主計町の3つの茶屋街があります。どの地区も石畳が敷かれ、料亭や茶屋が軒を連ね、特徴的な格子窓「木虫籠（きむすこ）」から三味線の音色が聞こえてくる、情緒豊かな街並みが魅力です。

文化と文学

作家の五木寛之は、1978年に主計町を舞台にした小説『浅の川暮色』を発表し、新聞記者と少女の恋愛模様を描きました。また、2010年には短編小説「金沢ものがたり　主計町あかり坂」を発表し、主計町の芸妓と泉鏡花の研究者の交流を通して、町の魅力を伝えています。小説には、名無しの坂を「あかり坂」と名付ける場面があり、泉鏡花の句からインスピレーションを得たというエピソードが描かれています。

旧町名復活への道のり

主計町は、1963年に金沢市が「住居表示に関する法律」のモデル都市に指定されたことで、1970年に一旦「主計町」という地名が消滅しました。しかし、1979年の市制90周年を記念した「歴史のまちしるべ標示事業」をきっかけに、旧町名復活への機運が高まりました。

1996年には旧町名復活委員会が結成され、住民たちの熱意が実を結び、1999年10月1日に旧主計町域に再び「主計町」という地名が復活しました。これは全国初の旧町名復活事例として注目を集めました。その後、2003年には金沢市の都市計画により伝統的建造物群保存地区に決定され、2008年には重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。

旧町名復活の条件

旧町名復活には、以下の条件を満たす必要がありました。

歴史と由来のある町名であること
住民の総意が得られること
* 法の枠を超えない範囲であること

これらの条件を満たした上で、主計町は歴史的な価値と住民の願いが結びつき、見事にその名を蘇らせたのです。


主計町は、その美しい景観と豊かな歴史、そして住民たちの熱意によって、今もなお金沢の文化を支える重要な場所として輝き続けています。

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