久住真也

久住真也

久住 真也（くすみ しんや）氏は、1970年に生まれた日本の歴史学者です。専門は日本史、特に幕末期における政治史の研究に深く取り組んでいます。現在は大東文化大学で教授として教育・研究活動を展開しています。

山梨県の出身である久住氏は、歴史研究の道を志し、1995年に茨城大学人文学部を卒業しました。さらに研究を深めるため、中央大学大学院文学研究科に進学。博士課程において専門的な研鑽を積み、2002年に満期退学となります。その後も研究は続けられ、2004年には「長州戦争の政治史的研究」と題する論文により、博士（史学）の学位を取得しました。この博士論文は、後の研究活動の基礎となる重要な成果です。

大学院での学びを終えた後、研究者としてのキャリアを歩み始め、大東文化大学に奉職。2015年には同学の准教授に昇任し、現在は教授として多くの学生を指導するとともに、自身の研究活動を精力的に行っています。

久住氏の専門である幕末期政治史は、江戸幕府が倒れ、近代国家へと移行していく日本の激動の時代を対象とします。特に、朝廷、幕府、そして雄藩と呼ばれる有力な諸藩（中でも長州藩など）の間で繰り広げられた複雑な権力闘争や政治的な駆け引きに焦点を当てています。従来の幕末史研究が特定の勢力や人物に光を当てがちだったのに対し、久住氏は政治システム全体の変容や、その中での各主体の位置づけ、特に徳川将軍の役割や権威の変遷といった視点から、幕末政治のダイナミズムを読み解こうとしています。博士論文のテーマにもなった「長州戦争」を、単なる軍事衝突としてではなく、当時の畿内における政治的な空間構造の変化という側面から分析するなど、既存の歴史観に新たな光を当てる試みを行っています。

その研究成果は、多数の著書として結実しています。2005年には、博士論文を基にしたとみられる『長州戦争と徳川将軍―幕末期畿内の政治空間』（岩田書院、近代史研究叢書）を刊行。これは、長州戦争の政治史的意味合いを、将軍側の視点や畿内の政治的状況から詳細に分析した初期の代表作です。2009年には、『幕末の将軍』（講談社選書メチエ）を出版。この著作では、幕末期の歴代将軍に焦点を当て、彼らがいかに時代の荒波と向き合い、その権威や役割がどのように変容していったのかを深く掘り下げ、新しい将軍像を提示しました。さらに2018年には、『王政復古 天皇と将軍の明治維新』（講談社現代新書）を発表。この著作では、明治維新における最も決定的な政治的転換点の一つである王政復古を、天皇と将軍という二つの権威の関係性の変化という視点から読み解き、その政治史的意義を鮮やかに描き出しています。

単著以外にも、他の研究者との共同研究にも積極的に参加しており、その成果は共著という形でも発表されています。例えば、2018年刊行の『明治史講義　テーマ編』（ちくま新書）や、2020年刊行の『明治史研究の最前線』（筑摩選書）などがあります。これらの著作を通して、自身の専門である幕末政治史だけでなく、明治維新とその後の時代についても幅広い視野から論を展開しており、研究の幅広さを示しています。

久住真也氏は、緻密な史料分析に基づき、従来の幕末史研究にはなかった視点から政治史を再構築することで、この複雑な時代の理解を深める上で重要な貢献をしています。大東文化大学を拠点に、教育者としても研究者としても、日本の近代史研究の発展に寄与しています。

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