久保事件

久保事件の概要

久保事件は、2000年に三重県鈴鹿国際大学の教授である久保憲一が、部落解放同盟の圧力を受け、三重県人権センターに対する批判的発言を理由に解任された事案です。この事件は、学問の自由や人権問題を巡る重要な課題を提起しました。

事件の経緯

インタビューと発言

1999年11月5日、久保は『三重タイムズ』のインタビューで、三重県人権センターに関する問題点について質問を受けました。久保はその際、研究活動としての見解を示しましたが、この発言が部落解放同盟三重県連合会の目に触れ、大学に対する圧力が始まります。

圧力と解任

部落解放同盟は、鈴鹿国際大学の経営母体である享栄学園に圧力をかけ、「久保を解任しないと、今後生徒を受け入れない」との脅しを行いました。この圧力を受けて、同大学学長の勝田吉太郎は久保に対し、発言の影響について警告し、責任を求める言辞を用いました。しかし、久保は学問の自由を主張し、真摯な研究姿勢を貫きました。

2000年1月17日、享栄学園は久保を教授職から解任する決定を下し、「公的機関に対する誹謗とも取られる発言が、学園の名誉を傷つけた」とし、解任が正当であると主張しました。

裁判の経過

地位保全の仮処分

解任後、久保は地位保全の仮処分を申請しましたが、2001年4月に津地裁が解任の正当性を認める判断を下しました。

民事裁判

2001年6月、久保は享栄学園と教授2人に対し、解任は不当であり、精神的苦痛を受けたとして訴訟を提起しました。2004年には津地裁が久保の発言を学問の自由の範疇として尊重する旨の判決を出し、慰謝料も一部認められました。

しかし、2005年には名古屋高裁が一審判決を覆し、久保の請求を棄却しました。更に2007年には最高裁で、大学側の処分は合理的理由がなく権利の濫用であるとの判断が下され、享栄学園は久保に対して慰謝料を支払うよう命じられました。

判決後の和解

2009年10月27日、久保と享栄学園の間で和解が成立しました。和解では、学園側が解雇を撤回し、未払い賃金を支払うことが合意されました。和解後、久保は任意の辞職届を提出し、大学を退職しました。これをもって久保事件は一応の結末を迎えました。

影響と考察

この事件は、学問の自由と人権の重要性を再認識させるものであり、教育機関における圧力や、その影響を受けた研究者の立場が問題となることを示しています。久保事件は、権利保護の観点からも重要なケーススタディとなっており、今後の人権問題への対応を考える上での一つの指針を提供するものと言えます。

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