久保田博

久保田博の鉄道技術者としての軌跡

久保田博（くぼた ひろし、1924年9月5日 - 2007年1月18日）は、日本の鉄道技術の分野で著名な人物です。彼は鉄道技術者としての経験を基に、多くの著作を執筆し、国鉄の技術や歴史の普及に大きく貢献しました。

経歴

長野県諏訪市上諏訪に生まれた久保田は、鉄道省の職員（機関士）の家庭に育ち、1946年に大阪大学工学部を卒業後、運輸省に入省しました。最初は鉄道現場での研修を受け、その後、鷹取工場に配属されました。1949年には日本国有鉄道（国鉄）が運輸省から独立し、彼も国鉄へと移籍しました。

国鉄でのキャリアは多彩であり、長野工場での勤務を経て、名古屋の中部支社や仙台鉄道管理局など、さまざまな部署で活躍しました。国鉄退職後は高砂熱学工業の技師長や東北大学の講師としても活動し、技術者や学者の視点から鉄道の発展に寄与しました。特に、青梅鉄道公園での保存機関車の選定に関わった経歴があります。

国鉄技術への貢献

久保田は国鉄職員として、当時の技術者たちから直接聞いた情報を自著に活かし、国鉄近代蒸気機関車史における深い知識を提供しました。また、在来線の技術に関する多くの著作を残し、一般への普及広報にも貢献しました。著書『鉄道工学ハンドブック』は、技術系キャリアを目指す現場の幹部にとって重要な参考資料となったのです。

彼は鉄道ファンや評論家たちの意見にも目を光らせ、自らの立場から批判や見解を述べていました。事故に関する著作も多く、特に営団日比谷線中目黒駅衝突事故やJR福知山線の脱線事故に対する考察を行い、問題提起をしていました。

専門家としての立場

久保田は事故調査検討会においても影響力を持ち、営団日比谷線の事故を受けての改善指示について、「諸要因の競合」という表向きな結論に対し、実際の改善必要性についての見解を述べました。彼の考え方は現場の経験から来ており、技術的な問題具体に取り組む姿勢が強調されました。

特に2005年のJR福知山線脱線事故に対する批判も注目されました。彼は鉄道アナリストの川島令三の見解に対して挑戦し、ボルスタレス台車の構造に対する誤解を指摘しました。この批判は、鉄道界における重要な議論を引き起こしました。

主な著書

久保田は多数の著作を表し、その中には『懐想の蒸気機関車』『最新鉄道車両工学』『鉄道経営史』『鉄道工学ハンドブック』などがあります。特に『栄光の日本の蒸気機関車』は彼の絶筆として知られ、鉄道界における彼の遺産を象徴しています。

結論

久保田博は、鉄道技術者としての豊かなキャリアを築き、日本の鉄道技術の発展に寄与しました。彼の著作や技術的な洞察は、今なお多くの技術者に影響を与え続けており、鉄道に対する情熱と責任感を持った姿勢が、後世に評価されるべき成果として語り継がれています。

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