久保義三

久保義三（1927年3月4日-2014年11月19日）は、日本の教育史に多大な貢献をした著名な学者です。東京に生まれ、1951年に東京文理科大学（現筑波大学）教育学科を卒業、同大学特別研究生として研鑽を積みました。その後、武蔵野美術大学で教鞭を執り、講師、助教授を経て教授に昇進。1969年には同大学学長を務め、名誉教授の称号も授与されています。さらに、学校法人武蔵野学院の理事長も兼任するなど、教育界において幅広く活躍しました。

久保氏の研究は、主に日本の教育史、とりわけ近現代史に焦点を当てています。特に、戦前・戦後の日本の教育政策、そしてそれらが天皇制や占領政策とどのように関わり合ってきたのかを徹底的に解明することに力を注ぎました。その研究成果は数々の著作に結実しており、『日本ファシズム教育政策史』、『天皇制国家の教育政策 その形成過程と枢密院』、『対日占領政策と戦後教育改革』、『占領と神話教育 占領軍による記・紀神話の排除過程』など、いずれも日本の教育史研究において重要な位置を占める名著として高く評価されています。

彼の著作は、単なる歴史記述にとどまりません。久保氏は、歴史的事実を詳細に分析し、その背後にある政治的・社会的な構造を鋭く解き明かしました。例えば、『日本ファシズム教育政策史』では、戦前の日本の教育政策がいかに国家主義的なイデオロギーに染まっていたかを詳細に論じています。また、『天皇制国家の教育政策』では、天皇制が日本の教育に及ぼした影響を多角的に考察しています。さらに、『対日占領政策と戦後教育改革』では、戦後の占領政策が日本の教育制度にどのような変革をもたらしたのかを分析し、その功罪を客観的に評価しています。

これらの著作に加え、『教育原理』、『教育の経済的生産性と公共性 ホレース・マンとアメリカ公教育思想』といった教育学一般に関する著作や、『現代教育史事典』（共編著）のような教育史研究の総括的成果なども発表しています。また、ホレース・マンの『民衆教育論』の翻訳も手掛けており、教育学研究への貢献は多岐に渡ります。晩年には自らの研究人生を総括した『釈然としない昭和期の教育 私の教育学研究六十三年』を上梓しています。

久保氏の著作は、その学術的な厳密さと明快な記述、そして教育史への深い洞察によって、多くの研究者や教育関係者から高く評価されています。彼の研究は、現代日本の教育を考える上で不可欠な知見を提供しており、日本の教育史研究に多大な影響を与え続けています。また、長男は政治学者である久保文明氏であり、父子の両名がそれぞれの分野で日本の社会に貢献している点も特筆に値します。久保義三氏の功績は、今後も日本の教育史研究において重要な位置を占め続けることでしょう。

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