久能山御蔵金銀

久能山御蔵金銀

久能山御蔵金銀（くのうさんおくらきんぎん）は、元和2年（1616年）に徳川家康が死去した際、隠居城であった駿府城に遺された莫大な金銀を指します。家康の死後、東照宮が建立された駿河国久能山に、これらの金銀は保管されることとなりました。

概要

家康が亡くなった元和2年11月、御三家（尾張徳川家、紀伊徳川家、水戸徳川家）からそれぞれ2名、計6名の家臣が駿府城にて、約200万両に相当する金銀を受け取りました。内訳は、金貨を収めた箱が470個、銀貨を収めた箱が4,953箱、その他となります。これらは久能山に設けられた御蔵に納められました。

同年のうちに、家康の遺言に基づき、尾張家と紀伊家にはそれぞれ30万両、水戸家には10万両（または15万両という説もあります）が分配されました。さらに5年後、尾張家の邸宅が焼失したことを理由に、久能山の御蔵から尾張家と紀伊家にはそれぞれ10万両、水戸家には3万両が貸し付けられました。ただし、この貸付は返済義務のない実質的な分与であったため、この期間中に全体の半分近い90万両以上が御三家に分配されたことになります。

残りの金銀は、寛永9年（1632年）に一部（銀25,800貫文）が江戸城の御金蔵に移され、寛永13年1月（1636年）に残りの全額が同じ場所に移されました。寛永20年（1643年）には勘定奉行による査検（監査）が行われ、その結果から、寛永9年と13年に江戸城に移された金銀は100万両余りと推定されています。したがって、御三家に移されなかった金銀は、ほぼ全額が江戸城に入ったと考えられています。

この時期は、将軍徳川家光による日光東照宮の大改築と時期が重なっており、100万両以上の金銀が久能山から江戸に送られた背景には、この改築費用を賄う目的があったと考えられています。これらの金銀は、直接的、あるいは間接的に、大規模な改築プロジェクトを支えたのです。

参考文献

所三男「久能山御蔵金銀」（『国史大辞典 4』吉川弘文館、1984年） ISBN 978-4-642-00504-3
飯島千秋「久能山御蔵金銀」（『日本歴史大事典 1』小学館、2000年） ISBN 978-4-09-523001-6

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