久芳村

久芳村（くばむら）

久芳村（くばむら）は、明治時代から昭和中期にかけて、広島県豊田郡に存在した行政村です。その区域は、現在の東広島市福富町久芳のおおよそにあたります。

地理

村の地理的特徴として、いくつかの河川が挙げられます。地域を潤す東丁田川（ひがしちょうだかわ）、谷河内川（たにごうちがわ）、そして押谷川（おしだにがわ）が流れ、かつて農業が盛んだったこの地の基盤を支えていました。また、村域には虚空蔵山（こくぞうさん）がそびえ、地域の景観を形作るとともに、人々の営みを見守ってきました。

歴史

久芳村は、1889年（明治22年）4月1日の町村制施行に伴い、それまでの豊田郡久芳村が単独で村制を敷き、近代的な自治体として発足しました。村としての歩みの中で、地域経済の活性化にも取り組み、1911年（明治44年）には家畜市場が開設されるなど、産業振興の動きも見られました。

しかし、昭和の大合併の波の中で、久芳村は歴史的な転換点を迎えます。1955年（昭和30年）7月10日、久芳村は同じ豊田郡に属していた竹仁村（たけにむら）と合併しました。この合併により、両村は廃止され、新たに町制を施行した福富町（ふくとみちょう）が誕生しました。久芳村は、この新しい福富町の一部となり、その行政村としての役割を終えました。

地名由来

「久芳」という地名の由来については、いくつかの説が語られています。有力な説の一つに、「くわ」という音に「桑」の字を当て、古代に大和国（現在の奈良県）から渡来したとされる桑原漢人（くわはらのあやひと）という氏族との関連を指摘するものがあります。この説が真実であれば、古代からのこの地の歴史や、人々の移り住みに関する興味深い手がかりとなります。

産業

久芳村の主要な産業は、古くから農業でした。豊かな自然環境と水源に恵まれたこの地域では、米作を中心に様々な農産物が生産され、村の経済を支える基盤となっていました。

教育

村内における学校教育の歴史も、村の歩みと深く関わっています。1891年（明治24年）には、地域の学び舎であった久芳簡易小学校が改編され、久芳尋常小学校となりました。この学校は、その後も地域の子供たちの教育を担い続け、現在の東広島市立久芳小学校へと繋がっています。

また、戦後の学制改革を経て、1947年（昭和22年）には久芳中学校が開校し、中等教育の機会を提供しました。この中学校も、その後の学校再編の中で統合され、現在は東広島市立福富中学校の一部となっています。

久芳村は、行政村としては姿を消しましたが、その地名や地域社会、歴史は、現在の東広島市福富町久芳として受け継がれています。

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