久須志神社 (富士山)

久須志神社：富士山の頂に輝く信仰の象徴

富士山頂、標高3715メートルに位置する久須志神社は、古来より人々の信仰を集めてきた霊場です。吉田口と須走口双方の山頂に鎮座し、雄大な自然と神聖な空気が漂うこの地は、多くの登山客にとって特別な場所となっています。富士山本宮浅間大社の末社として崇敬され、「東北奥宮」の別名も持ちます。

歴史：薬師堂から久須志神社へ

久須志神社の起源は薬師堂に遡ります。当初は須走浅間神社が管理を行い、開帳や入仏などを執り行っていました。しかし、時代の変遷と厳しい自然環境の影響により建物は次第に朽ち果て、元禄15年（1702年）に浅間大社が薬師堂の造営を行いました。

その後、入仏の権利などを巡り、浅間大社と須走浅間神社の間で争いが起こるなど、波乱に満ちた歴史を歩んできました。安永8年（1779年）の幕府裁許状では、薬師堂の開帳や扉の封印に関する権利などが明確に定められ、両者の関係が調整されました。

廃仏毀釈を経て、薬師堂は久須志神社と改称され、浅間大社の末社として現在に至ります。その歴史は、富士山の信仰と、周辺地域の人々の営み、そして自然との関わりを深く物語っています。

世界文化遺産：山頂の信仰遺跡群

久須志神社は、ユネスコ世界遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成要素の一つである「山頂の信仰遺跡群」に含まれています。この選定は、久須志神社が持つ歴史的・文化的価値、そして富士山信仰における重要な役割を世界的に認められたことを示しています。

境内と周辺：神聖な空間と絶景

神社の入口には、狛犬と「冨士山頂上淺間大社奥宮」と刻まれた石碑が立ち並び、神聖な雰囲気を醸し出しています。吉田口と須走口の頂上という立地から、登山シーズンには多くの参拝者で賑わいます。

久須志神社から南西に位置する剣ヶ峰は、火口の反対側にあり、神社からさらに800メートル以上の道のりを歩かなければ到達できません。剣ヶ峰を目指す登山者は、御殿場口頂上を経由するコース、金名水・雷石を経由する内輪コース、シャカの割れ石を経由する外輪コースの3つのルートから選択できます。いずれのルートも、富士山ならではの険しさ、そして絶景が待ち受けています。

厳しい自然環境：強風と標高

富士山頂は、しばしば強風が吹き荒れる過酷な環境です。久須志神社も例外ではなく、参拝者は常に自然の厳しさと向き合う必要があります。しかし、その困難さを乗り越えた先に待つのは、壮大な景色と、古くからの信仰が息づく神聖な空間です。久須志神社は、富士山という自然の偉大さと、人々の信仰の歴史を同時に体感できる、貴重な場所と言えるでしょう。

もう一度検索