乙劍社 (南砺市小原)

乙劍社（おとつるぎしゃ）

富山県南砺市の南西部、旧上平村の域内に位置する小原地区に鎮座するのが乙劍社です。豊かな自然景観に囲まれたこの神社は、地域の人々の信仰の中心として古くから大切にされてきました。乙劍社の御神体である不動明王像は、室町時代に制作されたと伝わるもので、南砺市の指定文化財となっています。

歴史と起源

乙劍社の創建年代は明らかになっていませんが、正徳2年（1712年）に作成された記録『五ヶ山村々神号之覚』には、既に「不動堂 北野村山伏海乗寺持分」としてその名が見えます。このことから、少なくとも江戸時代中期には当地に信仰の場が存在していたことがわかります。また、万延元年（1860年）の日付が入った札も発見されており、江戸末期の活動を示す資料となっています。

現在の社殿は、弘化3年（1846年）6月15日に再建されたものです。棟札によれば、当時の建築は氷見大窪にいた大工、藤兵衛によって行われました。その後、昭和の時代にも社殿の改修が行われています。昭和16年（1941年）の記念事業として計画された拝殿と本殿の造営は、昭和18年（1943年）に完成しました。さらに、昭和29年（1954年）にも社殿の修理が実施されるなど、地域の努力によって維持されてきました。

御神体

乙劍社の御神体は、ネヅ材（クロベ、アスナロなど）で造られた高さ56センチメートルの不動明王像です。その様式から、室町時代にこの地方で制作されたものと推測されています。長年にわたり乙劍社の御神体として崇められてきたこの仏像は、昭和48年（1973年）9月20日、当時の上平村によって有形文化財に指定されました。現在は南砺市の文化財として保護されています。

祭礼

乙劍社では、年間二回の祭礼が行われます。春季祭礼は毎年4月28日、秋季祭礼は毎年9月28日に執り行われます。これらの祭礼は、地域の人々にとって、神に感謝し、共同体の絆を確かめ合う大切な機会となっています。

乙劍社は、歴史的な記録と文化財、そして地域に引き継がれる祭礼を通じて、里山の信仰文化を今に伝える貴重な存在です。指定文化財である不動明王像とともに、静かな環境の中で地域の拠り所として存在しています。

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