九〇式機上作業練習機

九〇式機上作業練習機（K3M）

九〇式機上作業練習機、通称K3Mは、第一次・第二次世界大戦の間に日本海軍に導入された練習機で、三菱重工業によって開発されました。この機体は、昭和6年10月に正式に採用され、航法、通信、射撃、爆撃、偵察など、航空機搭乗員が必要な多様なスキルを習得するための訓練に特化して設計されています。太平洋戦争が終わるまで、広範囲にわたって使用され続けました。

開発の背景

日本海軍では、艦載機や偵察機の操作に関与する乗員を「偵察員」として一括管理しており、複座型や大型機が多いため、操縦士と同じ数の偵察員が必要でした。このため、一機で様々な偵察員の作業を訓練できる機体の開発が求められました。昭和3年8月に海軍からの指示を受けて、三菱重工業は開発に取り組み、昭和5年5月に試作第1号機を完成させました。

設計と性能

K3Mは、300hpの水冷式エンジンを搭載する単発単葉機で、主翼は木製骨組に羽布を張り、胴体は鋼管の骨組に羽布を張った角型のデザインとなっています。テスト中に振動や安定性の問題が指摘されましたが、改良を重ねた結果、昭和6年10月にはK3M1として正式に制式採用されました。しかし、エンジンに関する問題は依然として残っていたため、空冷式の「天風」エンジンに換装した改良型が開発され、その後はこの型が量産されることとなりました。さらに昭和13年には、より強力な中島製「寿」エンジンが搭載されたK3M3型が採用され、これにより機体の性能は大幅に向上しました。

役割と運用

K3Mはその形状から、搭載力に優れており、各種練習機器を装備することが可能でした。また、操縦席とキャビン部分の構造がフラットであるため、教官と生徒間の移動やコミュニケーションが容易に行えました。このため、太平洋戦争中には登場した白菊に比べても実用的と言われ、旧式機にもかかわらず、訓練や連絡、輸送任務において幅広く利用され続けました。

生産と型式

K3Mは、総生産機数が624機に達しました。特に重要なことは、陸上型の他にわずかながら水上機型（K3M2）も作られましたが、これらは昭和11年には全機退役となりました。また、輸送専用に改造された機体もあり、落下傘部隊の母機としても利用されました。

キ7の試作

日本陸軍もK3Mの高性能に注目し、昭和8年に三菱に対して陸軍仕様の試作機を作るよう指示を出しました。試作機が完成しましたが、最終的には中島製のキ6が採用されることになり、K3Mは陸軍では不採用となりました。

主要スペック（K3M3）

• - 全幅: 15.78 m
• - 全長: 9.56 m
• - 全高: 3.82 m
• - 全備重量: 2,200 kg
• - エンジン: 中島「寿」二型改二 空冷9気筒 580 hp × 1
• - 最大速度: 235 km/h
• - 航続距離: 800 km
• - 武装: 7.7mm旋回機関銃 × 1
• - 乗員: 5名

このように九〇式機上作業練習機は日本の航空訓練に多大な貢献をし、戦時中の育成にも重要な役割を果たしました。

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