九丁目、泣いて笑った交差点女の中の男一匹

1976年冬の傑作ドラマ『九丁目、泣いて笑った交差点 女の中の男一匹』

1976年12月4日から12月25日まで、日本テレビ系列の『グランド劇場』枠で放送されたテレビドラマ『九丁目、泣いて笑った交差点 女の中の男一匹』。全4話という短いながらも、濃密な人間ドラマが展開する作品として、当時高い視聴率を獲得しました。脚本は柏戸比呂子氏によるデビュー作であり、その繊細かつ力強い筆致は、多くの視聴者の心を掴みました。

複雑な人間模様と時代背景

このドラマは、古山春男とその妻・秋子を中心とした家族、そして彼らを取り巻く人々の複雑な人間関係を描いています。古山家は、一見平凡な家庭のようでありながら、それぞれの登場人物が抱える秘密や葛藤が、物語全体に張り詰めた空気感を醸し出しています。

愛川欽也が演じる古山春男は、一見すると頼りになる夫であり父親ですが、心の奥底には隠された苦悩を抱えています。坂口良子が演じる妻・秋子は、夫を支えながらも、自身の悩みや葛藤と戦っています。

さらに、由紀さおり演じる沢田夏江、ナンシー美紀演じるナンシー、松原智恵子演じる悠子など、個性豊かな登場人物たちが、それぞれの思惑や感情を抱えながら、古山家に関わってきます。これらの登場人物たちの絡み合いが、ドラマに奥行きと複雑さを与え、視聴者を惹きつけます。

また、1970年代の日本社会の世相も、このドラマの重要な背景となっています。高度経済成長の終焉、社会構造の変化、そして人々の価値観の変容といった時代の流れが、登場人物たちの生き方に影響を与え、物語をより深く理解する上で欠かせない要素となっています。

豪華キャスト陣

本作には、愛川欽也、坂口良子、由紀さおりといった、当時の人気俳優たちが顔を揃えています。彼らの卓越した演技力によって、登場人物たちの感情や心理が繊細に表現され、視聴者は登場人物たちの心情に深く共感することができます。

特に、愛川欽也と坂口良子の夫婦役は、絶妙なバランスで描かれており、見ている者の心を揺さぶる名演技となっています。他の脇を固める俳優陣も、それぞれの役どころを丁寧に演じ、ドラマ全体に深みを与えています。

脚本家デビュー作としての意義

この作品は、柏戸比呂子氏にとって脚本家デビュー作という大きな意味を持っています。その後も数々のヒット作を生み出した柏戸氏ですが、この作品は彼女の才能の出発点であり、その後の彼女のキャリアに大きな影響を与えた作品と言えるでしょう。

昭和の時代を映す鏡

『九丁目、泣いて笑った交差点 女の中の男一匹』は、単なる恋愛ドラマや家庭ドラマにとどまらず、1970年代の日本社会の縮図とも言うべき作品です。このドラマを通して、昭和の時代の人々の生き様、そして心の機微を垣間見ることができるでしょう。時代を超えて、現代の視聴者にも多くの感動と共感を呼ぶ、忘れがたい名作ドラマです。

スタッフ

脚本：高野秋彦、柏戸比呂子
演出：小林俊一 ほか
* プロデューサー：早川恒夫

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