九九式手榴弾

九九式手榴弾の概要と特性

九九式手榴弾（きゅうきゅうしきてりゅうだん）は、大日本帝国陸軍が1939年に制式化した手榴弾です。この手榴弾の開発は、高まる戦争の需要に応えるために始まりました。初めは九九七式手榴弾が主流でしたが、戦局の進展に伴い、より大量かつ効率的な生産が可能な手榴弾が求められることとなりました。

開発の経緯

開発は1938年、近接戦闘兵器研究委員会において始まりました。目的は、手榴弾の投擲距離を延ばし、より軽量で扱いやすい兵器を作り上げることです。九九式手榴弾は、甲と乙の2種類が設計され、特に甲型は鋳鉄製で円筒形の外形を持ち、約300gという軽さが特徴です。

初期の試験ではポジティブなフィードバックが得られ、設計に関する幾つかの変更が行われました。特に、段階を経て、形状が卵型から円筒形に戻されるなど、様々な試みが行われました。こうした改良を経て、1940年6月に正式に仮制式が承認されました。

構造的な特徴

九九式手榴弾（甲）は、44.8mmの弾径を持ち、高さは87.2mmです。信管は、イジェクターによって作動し、発破の遅延時間は4〜5秒です。この手榴弾は、一般的な破片手榴弾とは異なり「爆破用手榴弾」として設計されており、特に戦闘環境での利便性を重視しています。

信管の構造は、九七式手榴弾のものに似ていますが、いくつかの改良点が挙げられます。撃針は固定式になっており、安全栓の効果を高めるための設計変更が施されています。また、ガス受けが追加され、使用する際の安全性も向上しています。さらに、小銃による発射も可能で、射程は約100mとなっています。

九九式手榴弾（乙）の特性

九九式手榴弾（乙）は、手投げ専用で設計されており、その弾径は44mm、全高は72mm、重さは約275gです。このモデルは、コスト面や製造効率を考慮して設計され、量産が容易なため、戦争中に広く使用されました。信管は摩擦発火式で、テクニカルな知識を要さない使い方が可能です。

投げやすさを追求した設計で、投擲されると、引き索が切れて安全に使用される構造となっています。爆発時には、約4秒後に炸裂し、約30メートルの投げ距離を持っています。発火時の安全性も考慮され、通例手榴弾で見られた火傷事故を回避するための設計も採用されています。

生産と評価

九九式手榴弾は、約1000万個という膨大な数が生産されたと伝えられています。これは、戦争期間中の需要に十分に対応できるだけでなく、次々と他国の兵器と比較しても、その信頼性と効果の点で十分な評価を受けました。特に、アメリカ軍がキスカ島で発見したことから「キスカ」と呼称されるようになっており、その名は今もなお戦史に残っています。

九九式手榴弾は、日本陸軍の戦闘能力を支えた重要な兵器の一つであり、その設計と製造の背景を知ることで、当時の技術力や戦略を理解する一助となるでしょう。

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