九四式三号乙無線機

九四式三号乙無線機について

九四式三号乙無線機（きゅうよんしきさんごうおつむせんき）は、大日本帝国陸軍によって開発された無線通信機器です。この無線機は、中距離通信を目的として設計されており、特に師団通信隊の装備として利用されていました。

1. 設計と運搬手段

この無線機は、高い機動性と通信距離を確保するため、駄馬2頭または三九式輜重車丙1輛で運搬できるように作られています。また、全備重量は160kgに設定され、運搬の利便性を考慮されていました。これにより、通信部隊はさまざまな戦場環境においても信頼性の高い通信を維持することが可能でした。

2. 開発の経緯

九四式三号乙無線機の開発は昭和6年から始まりました。初期の段階では、師団司令部との連絡を主な用途とし、また対空連絡のために十五号無線電信機とも連携できることが求められました。通信距離は50kmが設定され、そのうちの30km圏内では容易に通信が可能であることが重要視されました。このため、運搬手段として駄馬3頭、または輜重車丙2輌が要件として定められました。

昭和7年には、騎兵通信班用の無線機の研究が進められ、師団通信隊用の無線機もそれに準じる形で性能向上が図られました。翌年の昭和8年には、大きな運搬手段の見直しが行われ、駄馬2頭と輜重車丙1輌に搭載する仕様へと改定されました。

実際の試験も行われ、満州北部での雨期・炎熱試験や冬期試験を通じて、条件における実用性が確認されました。この一連の過程で、通信手が熟練すれば本無線機の性能は十分に発揮されることが判定されました。

3. 試験と改良

昭和10年には、陸軍歩兵学校に試験を依託し、さらなる改良の必要性が指摘されました。特に、堅牢度や混信の分離能力の向上、調整や取扱いの容易さが求められたため、改修作業が行われました。これらのフィードバックをもとに改良が進められ、11月には陸軍技術本部からも異論がないことを確認の上、仮制式制定の申請が行われました。

4. 構成要素

九四式三号乙無線機は、主に以下の3つの部品から構成されています。

4.1 通信装置

通信機は送信部と受信部の2つの部分で構成され、送信部は水晶制御や主発振により電信送信を行います。受信部は拡大と検波機能を備え、広範囲な周波数を扱うことができます。

4.2 発電装置

これは、手廻式発電機と直流発電機で、安定した電力供給を実現します。これにより、無線機が適切に機能するための環境が整えられています。

4.3 空中線

無線機に必要な送信用と受信用の空中線は、それぞれ定められた高さや長さで設置される設計となっており、信号の送受信を効果的に行います。これらはまた、運搬の便宜を考慮した仕様になっています。

九四式三号乙無線機は、陸軍の通信能力を高めるために多くの試行錯誤を経て整備された重要な通信機器であり、戦場における情報伝達の重要性を担っていました。

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