九四式四号乙無線機

九四式四号乙無線機の概要

九四式四号乙無線機（きゅうよんしきよんごうおつむせんき）は、大日本帝国陸軍によって開発された装甲車両用の無線機です。この無線機は、特に九二式重装甲車に搭載され、電信送信及び無線電話の機能を持つことから、戦場での通信手段として重要な役割を果たしました。通話距離は約1kmに達し、戦闘環境でもしっかりとした通信を維持する能力がありました。

開発の歴史

この無線機の開発は昭和6年に始まり、初めは軍用列車向けの無線通信システムとして設計されました。その後、輓馬車輌や自動車など、移動する車両同士の通信にも対応できるように方針が変更されました。

昭和6年10月には、陸軍騎兵学校で行われた機甲自動車射撃演習において、八八式飛行機用三号無線電話機を使い、装甲自動車に無線電話が必須であることが確認されました。この結果を受けて、更なる開発が進められました。

昭和7年には、十三号甲無線機を改修し、第1回試験が実施され、無線機としての基本性能が確認されました。その後、昭和8年の2月から6月には第一回試作器材の試験が実施されました。これにより、構造が堅牢であり、簡単に扱えることが評価されました。さらに、装甲自動車が行動中または停車中に通信できる状況が実現しました。

更なる試験と改良

昭和9年には通信可能距離の範囲が0.5kmから1kmに引き上げられ、新たな試作が行われました。この試作機は改造された九二式装甲自動車に装備され、夏季の実用的な電信交信が可能であることが確認されましたが、無線電話機能については限られた近距離でしか実用化できないことも明らかになりました。

昭和10年1月には、冬期試験で両方の通信手段が有効であることが確認され、さらに3月には短期間での製造が可能であることが認められました。同年9月の陸軍騎兵学校の試験では実用適性が確認され、11月には陸軍技術本部からの異論もなく、正式な制式制定へと進むことができました。

機構と構成

この無線機は、基本的に通信機、付属品、及び材料で構成されています。通信機自体は送信部と受信部に分かれており、送信部は水晶制御または主発振によって無線電話と電信送信が可能で、周波数範囲は4,200から4,600キロサイクル毎秒となっています。一方、受信部は信号を拡大し、検波する機能があります。また、付属品には調整盤や受話器などが含まれ、運用上必要な支援を提供します。

発電装置も無線機の重要な一部で、直流発電機と蓄電池によって電源を供給します。この発電機は通信機の発振部と受信部が要求する電圧を確保します。装置を運搬する際は、収納用の箱に全ての装置を収めることができるため、移動に便利でした。

まとめ

九四式四号乙無線機は、その設計から戦場での通信を円滑に行うことを目的としており、当時の戦闘における重要な通信手段としての役割を果たしました。無線機の開発過程や試験を通じて進化を遂げ、最終的に実用的な通信手段としての地位を確立したことは、戦略的な要素にも寄与したと言えるでしょう。

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